ネットを通じて子育てを「シェア」 3万人が利用するインフラに
子どもの送迎や託児を、ネットを通して親同士で頼り合う「子育てシェア」。開始から2年半で登録者は3万人を突破、全国にサービスが拡大している。甲田恵子代表は“知人間共助”は多くの社会課題を解決するカギだと指摘する。
ママたちのSOS発信ツール
急な残業が入った。同窓会に参加したい。体調不良で少しだけ休みたい......。子育てをしていると、「少しの間でも子どもを預かってくれる人がいたら」と思う状況が頻繁に訪れる。そうしたママたちのSOSに応えるべく、昔ながらの「ご近所の頼り合い」を現代に蘇らせたのが、AsMamaが2013年4月から提供する「子育てシェア」だ。最大の特徴は、ネットを活用して顔見知り同士が送迎や託児を頼り合う“知人間共助”のプラットフォームを、利用者からはお金を取らずに利用者が支援者に1時間ワンコイン程度(500円―700円)の謝金を払うというルールで提供している点にある。
登録者3万人を突破したワンコインの子育てシェア
「明日、美容院に行きたいんだけど、誰か子どもを預かって」「OK! 何時から?」。AsMamaの「子育てシェア」では、このような気兼ねのない頼り合いが日常的に行われている。学校やマンションが同じ親同士など事前に子育てシェアに招待したりされたりしながら繋がっておき、いざ困ったことがあると、支援拠点からの発信距離を選んで依頼内容を送信すると、都合がつく支援者から順に素早く連絡がもらえる仕組みだ。支援者には謝礼として1時間500円を直接、またはクレジットカードで支払うルールを設けることで、双方の気兼ねや負担を払拭している。
支援者は何も昔からの知り合いばかりではない。AsMamaでは周囲に頼れる知人がいない人のために、親子参加型の交流会を年800回開催し、友達づくりの場も提供している。さらに、「預かり中に何かあったら」という双方の懸念には、全支援者に最大5000万円の損害賠償保険を適用する日本初の仕組みで応えている。こうしたきめ細やかなサービスが評判を呼び、登録者は北海道から沖縄まで各地に広がり、ローンチからわずか2年半で3万人を突破。解決率・リーピート率はともに8割を超えている。
AsMama代表を務めるのは、自身も10歳の娘を持つワーキングママの甲田恵子氏。前職ではベンチャー投資会社で広報・IR部長として活躍していたが、2009年に全社員の9割がリストラに遭い、退職を余儀なくされた。「まさに青天の霹靂だった」という甲田氏だが、起業のきっかけは退職後に通った職業訓練校での出会いにあったという。
「そこには職歴も学歴も男性と変わらないのに、出産や育児を機に離職をせざるを得ないママたちが大勢いました。一方、退職後に専業主婦を選んだママたちは、育児経験を活かして社会に役立ちたいという思いを募らせている。“助けを求めている人”と“助けてあげたい人”の両者をマッチングさせたら社会的課題が解決するのではないか、と考えたのです」
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