IoT×モビリティの衝撃 着実に進む産業構造のパラダイムシフト

IoTにおいて、自動車は重要分野の一つになると考えられている。しかし、業績好調な日本の自動車メーカーは、IoT化が遅れてしまっているという。自動車産業や周辺の関連分野では、どのようなコンセプトが主導権を握るのだろうか。
文・桃田健史 自動車ジャーナリスト

 

アップル「カープレイ」とグーグル「アンドロイドオート」。今後、自動車メーカーにとって必須アイテム

米中の大手IT産業がクルマに参入

自動車産業界がいま、史上最大の大きな曲がり角に立っている。

アップル、グーグルさらには中国のバイドゥ(百度)やアリババ等、大手IT系企業たちがクルマの領域へと本格参入してきたからだ。こうした動きが表面化したのは2014年からであり、まだ日が浅い。

同年1月、グーグルはGM、アウディ、ヒュンダイ、ホンダ、そして米大手半導体メーカーのエヌビディアと共に、OAA(オープン・オートモーティブ・アライアンス)を結成。まずは、カーナビゲーション、オーディオ等、クルマのエンターテイメントの心臓部である車載器に対して、アンドロイド端末と連携する『アンドロイドオート』を提案。さらには、車載器自体のOS( オペレーティング・システム)もアンドロイド化することで、クルマ全体へグーグルの影響力を拡大しようとしている。2015年5月時点で、OAAにはすでに28の自動車ブランドが参画を表明している。

またグーグルは2014年5月、小型の自動運転車の開発風景をYouTubeで公開。大手メディアは一斉に「アップルに対抗して、テスラとの協業か!?」と騒いだ。

そのアップルは2015年に入り、テスラからEV開発技術者を引き抜いたと噂される、俗称『アップルカー』の実験車両がシリコンバレー周辺で目撃されるようになっている。さらにフォルクスワーゲンは2015年4月、『アップルウオッチ』と車載器との連携を発表する等、アップルのクルマへの関与が加速している印象だ。

この他、世界の自動車産業界が戦々恐々としているのが、中国大手IT3社の動きだ。検索大手のバイドゥはBMWと自動運転技術で提携。ネット通販大手のアリババは、中国国内で新車のネット販売を強化、さらにSNS大手のテンセントは地図メーカー大手を買収してカーナビゲーションへの影響力を増している。

世界最大の自動車製造・販売国では、欧米日が主導する世界標準化は通用せず、中国の独自色が日に日に強まっている。

テスラが2015年内の発売を目指す、SUV型EVの「モデルX」

仮想体験を楽しむディスプレイ。CES2015にて

ITがクルマを攻める本当の理由

こうしたIT産業の自動車産業界への相次ぐ参入。彼らの狙いは何か?

それは、トヨタやフォルクスワーゲン等、旧態依然とした完成車の製造・販売事業ではない。狙いはズバリ、『人の動静の把握』だ。

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