インダストリー4.0 ビジネスモデルの大転換期が到来

工場同士、サプライチェーン、マーケットがネットワークでつながる「インダストリー4.0」。新しいビジネスモデルが数多く登場し、地方や中小企業にも変革が訪れる。
文・清成忠男 事業構想大学院大学学長

 

新しい産業革命を発信すべく、ドイツが産学官をあげて推進するインダストリー4.0。写真は2015年3月、産業用ロボットメーカーのKUKA視察するメルケル首相 Photo by Joerg Koch/gettyimages

インダストリー4.0とは

インダストリー4.0については、すでに報告書等の文献が数多く刊行され、メディアでも取り上げられている。しかし、その真価は正しく理解されておらず、言葉がひとり歩きしているようである。

ドイツでは、関連経済3団体によってインダストリー4.0推進のプラットフォームが形成されている。この組織が本年4月に発表した報告書において、あらためて定義が行われている。すなわち「インダストリー4.0の概念は、第4次産業革命を意味づけるものである」と。

この場合、産業革命は価値創造の新段階を意味する。

さて、インダストリー4.0の概念が提起されたのは、2011年1月のことだ。H.カガーマン氏が中心となって3人の大学院大学教授がドイツ政府に提起したものである。産業においてパラダイム転換が進展しており、今後10年の間にサイバー空間と実空間の融合をベースにしたビジネスモデルが可能になる。したがって、新しい産業革命をドイツから起こすべく、インダストリー4.0を政府の将来プロジェクトに入れるべきだと提案したのである。ちなみに、カガーマン教授はドイツ科学技術アカデミーの会長であり、SAP社でCEOを務めていた。

続く4月にインダストリー4.0は、ハノーファー・メッセで取り上げられた。初めて表舞台に登場し、機運が盛り上がった。

政府はこうした提言の意義を理解し、産・学の専門家の参加で検討のうえ、同年11月に連邦政府の将来プロジェクトに取り入れられた。そして、連邦の教育研究省は「将来プロジェクト・インダストリー4.0」を助成するプログラムの基本方向について告示を発表して、連邦政府の「ハイテク戦略2020」における将来志向のイノベーション政策にインダストリー4.0を明確に位置づけたのである。

政策の主要な目的は、「サイバー・フィジカル・システムズ」(以下CPSという)をベースにした生産と市場の開発である。CPSとは、サイバー空間の強力なコンピューティング能力と、実世界の物理的なプロセスを結びつけたシステムである。CPSは進化の途上にあるが、インダストリー4.0の原動力であり、産業等の大転機をもたらす。そして、IoTの活用がインダストリー4.0の活動領域を大きく広げた。

インダストリー4.0は「集中型」生産から「分散型」生産へのパラダイム・シフトをもたらす。その結果、バリューチェーンとビジネスモデルが根本的に転換する。インダストリー4.0は、まさに第4次産業革命に相当し、モノ、データ、サービスのすべてがインターネットでつながる世界を構築するコンセプトである。(図1)

出典:it's owl

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