つながる心、つながるパス イメージの共有が戦術の幅を広げる
ひとつのボールをめぐり、22人の選手が入り乱れるフィールド。常に変化し続ける戦況の中で、合図も出さずにパスを出し、ボールをつなぐためには、チーム内で戦術を共有意識としてもつ必要がある。その礎となるのは、普段の練習中のコミュニケーションがつくり出す信頼関係。浦和レッドダイヤモンズのMF、鈴木啓太氏に戦術のつくり方を聞いた。
文・小島 沙穂 Playce
敵味方22人の選手がひとつのボールを巡り、フィールドを駆ける。45分×2の90分間、常に動き続ける戦況を分析し、チームが攻撃を仕掛ける際、ボールが動く中で生まれる隙がある。
その隙を狙い、繰り広げられる駆け引きも、サッカーのおもしろさのひとつと言えよう。
相手の隙に付け入る能力はもちろん、自チームの隙を小さくすることも、勝つために重要な能力である。浦和レッドダイヤモンズ(以下、レッズ)のMF、鈴木啓太は、そのリスクマネジメント能力に優れた選手のひとり。チームの中~後方を支え、アシストをする。そのプレーは数々のピンチをチャンスに変えてきた。
しかし、最近彼のプレースタイルにはある変化が現れた。これまでの守備型のプレーとは異なり、鈴木自身が攻撃に転じるケースが増えてきたのだ。これは、レッズの現監督、ミハイロ・ペトロヴィッチ氏の影響が大きい。
大切なのはチャンスを見逃さず“挑戦”すること
「今でも守備には強い自信があります。しかし、今は守備だけではなく、攻撃も両立することが監督に求められているんです」
ペトロヴィッチ監督がレッズを指揮するようになって4年。鈴木は前線でも戦えるMFとなっていた。
ドリブルして前に出て、チャンスがあればゴールを狙う――このプロセスは彼以外の選手の役割で、そのサポートに徹することこそが鈴木の役割だと思っていた。しかし、ペトロヴィッチ監督は彼に『チャンスがあればどんどん前へ行け』という指示を出す。最初は多少違和感を覚えたが、指示通り前に出ることを意識するうちに、攻撃することにも楽しみや喜びを感じるようになっていた。
「もちろん、今でもリスクマネジメントは僕の重要な役割だと思っています。しかし、監督にはそれ以上のことを求められている。監督には『失敗してもいいから、チャレンジしろ』とよく言われます。自分がきちんと戦術を立てたうえで、そのプレーをしたのだとすれば、もし失敗してもそれはよいプレーなのです。監督に『ブラボー』と言われると自分もうれしいですし、今後もどんどん挑戦していきたいと思いますね」
相手の戦術をいかに崩すか
鈴木のポジションはボランチ。フィールドの中心のMFとして、FWとDFをつなぐ舵取りの役目を担う。
「ある試合で相手に対しプレッシャーをかけたい場面で、自分が普段いるポジションではなくて、相手のディフェンス最終ラインの付近のセンターフォワードというポジションを取った時がありました。相手のディフェンス陣がボールを回す目の前まで行って、プレッシャーをかけたんです」
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