一見すると、ヘタレで軟弱な嗜好性が感じられる現代日本のポップカルチャー。未来予測分析で名を成し、政府機関でも活躍する川口盛之助氏に、日本のポップカルチャーが持つ可能性、企業が狙うべき事業領域について、話を聞いた。
これまで強みを持ってきたメカトロ分野で、日本人が給料に見合うだけの付加価値を収穫できる時代は終わりつつあります。テレビやPCなど、視覚系のデジタル機器はコモディティ化が進み海外勢が優位です。
しかし、視覚以外の五感、触覚、味覚、嗅覚などは、デジタル化するのが難しい分野です。デジタルは数値化されたスペック競争の世界ですが、アナログには、こだわりの世界が残ります。日本は、そうした感性に訴えかける分野でなら強みを発揮できます。
今後、日本人が持つ「こだわりの職人気質」をどう活かせばいいのか。そのカギを握るのが、日本が持つサブカルチャーの“物語性”です。

川口 盛之助(盛之助 代表取締役社長)
草食化は世界的なトレンド
日本には、戦後70年にわたって蓄積されてきたポップカルチャーのストックがあります。若い頃に見たアニメやゲームの世界観、登場するキャラクターの行動原理やファッションなどの“物語性”を共通の感覚として持っています。それは「クールジャパン」と称されるように、世界的な影響力を持ち始めています。
日本から発信される今日のポップカルチャーは総じて、ヘタレ系、カワイイ系、ユル系など、幼児的で女性的です。その種のものに眉をひそめ、日本的と解釈されることを潔しとしないシニアの方々も多いでしょう。しかし現に世界の若者に評価されているものを「嘆かわしい」と否定しても始まりません。
現在、単に機能を満たすだけでなく心を満たすことが重要になっています。日本のポップカルチャーの底流には素朴な癒し感があり、それが世界の人を惹きつけています。
「草食系」の人が増えているのは日本だけでなく、世界中の近代都市に暮らす富裕層の間でメトロセクシャル化(女性化、子供化)が進行しています。世界的に都市の人口増が進み、衣食住に満ち足りた人が増えている中で、都市化比率で世界の先頭を走る日本は、世界のトレンドを先駆けているのです。

弱者のニーズに応える感性
日本は世界でも豊かで安全な国で、古い価値観からは「そんなのは贅沢」と思われるような消費が活発化しています。日本では、「切実な弱者」ではなく、多様な「贅沢な弱者」のニーズに応えるモノやサービスがたくさん生み出されているのです。
残り71%
会員の方はここからログイン
バックナンバー