自ら学ぶ子どもを育てるフィンランド
受験戦争という言葉が日本では定着し、学習塾に通う子どもが増えている。フィンランドには学習塾はなく、中学卒業までは他人と比較するテストもない。子どもたちの意欲を長期的に引き出して生涯学習社会へ移行させる施策は何か。
中学卒業後に約半数は実業、実務の道へ
フィンランドは、世界イノベーション指数や国際競争力指数で常に上位にランクされる。その基は教育にあるといわれる。では、アジアの子どものようにあくせく勉強しているかと思えば、そうではない。
フィンランドの子どもたちには、勉強は学校の授業のみで、学習塾はない。
しかも、学校の授業時間は世界でも最も少ないくらいだ。中学受験も、高校受験もない。その代わり、総合大学に入学するには、1教科に5~6時間もかける年2回の全国大学入学資格試験と、大学の学部・学科独自の入学試験がある。アカデミック・プログラムに適応できるか、すなわち将来研究を続けられるかどうかきわめて厳しい実力評価がなされる。
しかし、中学卒業後には、専門学校、専門職大学(ポリテクニク)、専門職大学院といった別の道も用意されていて、実業、実務を学びながら質を高めていくこともできる。学校制度は、17歳以降は大きく二つに分かれる。
進路をみると、中学卒業生のおよそ半分が職業系のコースをたどる。とりわけ、男子では、こちらを選択する者の方が普通科高校進学者よりも多い。この場合、職業経験がきちんと評価される仕組みになっている。日本のように、「できたら避けたい道」ではなく、積極的に能力を伸ばす道と社会ではとらえられているのである。
といっても、昔からそうだったわけではない。1991年のソ連崩壊に続く大不況の後、1994年の教育大改革に着手し、EUの制度改革に合わせて着々と作り上げてきた道である。実業、実務という物作りのルートにしても、政府が積極的に宣伝して、国民を誘導した。
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