2013年8月号
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南青山データサロン

C7のリスク 走りながら考える

岩田修一(事業構想大学院大学 教授)

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知性のシンボルとされるチャールズ・サンダース・パースやアンリ・ポアンカレは論理を積み重ねた演繹や事例データを集めた帰納の先にある悟りや神の啓示とでもいうべき直感的な推論に着目した。リスクの適切な扱いにはそうした直感についての知性が要請される。

リスクの特性想像力を働かすと危険の種は増え続ける。人々は、予測できる危険はモデルと確率でリスクと表現し、滅多に起らない事はブラックスワンと言って安心し、恐がり過ぎを杞憂と言ってバカにし、危機を乗りこえて成功すればセレンンディピティーだと褒めそやし、取り返しがつかなくなったら想定外だと諦める。

いずれにしても私たちは賢く過去を総括し、未来を夢見て、都合良く現在を生きる。リスク論は未だ明らかでない未来についての知の限りを尽くした推論を基にした生き残るための道具であり、主体の意図によってリスク評価、リスクコミュニケーション、リスクマネジメントなど表現を変える。

杞憂と現実杞憂が実像となって世界に配信されたのは、今年の2月15日のことである。その衝撃的なウラル地方での隕石の落下と破砕の映像も半年もたっていないのに人々の記憶から消えつつある。

空に閃光が走り、衝撃波でビルの窓ガラスが割れ、負傷者が出たがいずれも軽傷で、死者はいなかったという。いずれの被害も私たちの想像力の範囲内で、影響が比較的に少なかったためである。

隕石の運動エネルギーも、大気との摩擦熱で隕石が破砕し、粉々になれば塵、砂利、小石になれば、速度も遅くなり、リスクは小さい
photo by State Farm

しかしながら、もし隕石が上空で破砕せずそのまま地上に落下し衝突したらとナイーブに考えると怖くなる。隕石の重量と速度で勘定できる膨大なエネルギーは、衝突場所が地面だったら大規模なクレーターを形成し、水面だったら大きな津波を起こし、原子炉や大規模化学プラントだったら大事故になり、甚大な被害をもたらす。たまたま隕石の落ちたチェリャビンスク州には旧ソ連の軍事用の秘密都市があり、軍事用のプルトニウムの生産が行われ、原子炉と再処理施設が1957年には大規模の汚染事故があった場所で、今でも放射性物質が事故で漏洩した大量に不十分な体制で管理されている地域である。想像力たくましい人は中間貯蔵施設が決壊し、河川を通して北極海が汚染されてしまうと心配してしまうだろう。

もっと大きな隕石だったらと考えることも出来る。3年前に地質学や堆積学、古生物学、惑星科学、地球化学、地球物理学など幅広い分野の研究者が、地球全域にわたる同位体組成のデータを駆使し、これまでの学説を総括し、恐竜絶滅の原因は小惑星衝突であるという論文を発表した。この時の地球にぶつかった隕石の規模は、広島型原爆で何億個、マグニチュード10超の地震、津波は高さ数百メートルなどと計算されている。

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