陸上に「理想の漁場」を実現

農業の工業化が植物工場なら、漁業の工業化は陸上養殖──。天候や環境に左右されず、安心で安全な魚介類が生産できる陸上養殖に注目が集まる。付加価値を付けたブランド戦略で、海外マーケットに乗り出す企業も現れた。

ISPS装置の標準面積は約700坪。水槽の中は、人工海草による自然に近い環境が実現されている

日本有数の豪雪地帯、新潟県妙高市。山に囲まれた内陸地に、波に揺られて生き生きと泳ぎまわるエビがいる。妙高の雪解け水と富山の海洋深層水で育った「妙高ゆきエビ」だ。

巨大な水槽内の特殊装置でつくられた波が人工海草をゆったりと動かし、そのまわりをエビが行き来している。

10年強かけて研究開発した「屋内型エビ生産システム」(ISPS)で、陸上でのエビ養殖に成功したのは日本初のこと。運営しているのは、市内の建設会社・岡田土建工業とISPSを開発したアイ・エム・ティー他が共同で設立した妙高雪国水産だ。

日本における養殖漁業は、従来型の海面養殖が一般的で、陸上養殖はあまりなじみがない。しかし、世界的トレンドでみると、陸上養殖は年率8%の勢いで成長している産業で、とりわけ欧州や米国、イスラエルなどで普及が加速している。

人工海草が揺れることで、エビが泳いで育つ

三菱総研社会公共マネジメント研究本部の木附誠一主席研究員は、「中国などの経済成長に伴って水産物需要が増え続けているのに対し、漁獲制限もある中で、天然の水産資源が頭打ちになり、グローバルな取り合いになっています。そうした中で、世界では養殖生産量が急伸しています。特に、近年は餌の食べ残しや排泄物による海洋汚染などが問題視されている海面養殖よりも、環境負荷の少ない陸上養殖の開発が進められています」と説明する。

陸上養殖への関心は高まっており、異業種からの参入が始まっている。

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