責任会計で経営者意識の醸成と全員参加経営を目指す

会計は経営の羅針盤。事業を成功に導くには意思決定会計としてのビジネス会計の活用が欠かせない。本稿は6回にわたり、社長はじめリーダー層が身に付けておくべき損益分岐点、投資採算、企業価値、資金繰りなどの要点を分かりやすく実践的に解説する。

1 パナソニックとJALの責任会計

パナソニックが起死回生策の一環として、これまで中断していた事業部制を再び導入したことが先月に日刊紙に報道された。事業部制は本社機構の下に配置された事業部門に生産・販売・管理など、自立的な事業運営を行う上で必要な機能を内包させるとともに大幅な権限を移譲することで経営責任を明確にする経営システムである。1920年代にデュポンやGMが導入し、日本では松下電器産業がいち早く採用したことで知られている。

また、奇跡的再建で再上場したJALは稲盛会長が京セラ流のアメーバ経営を導入したことが経営再建に大きく寄与したと言われる。アメーバ経営は社内を小集団グループに編成し、「時間当たり採算」という統一した評価基準により部門別に採算を求め、全社員に経営者意識の醸成を促がす経営システムである。「事業部制」と「アメーバ経営」に共通するのが責任会計システムである。

事業部制とアメーバ経営は、編成する組織のくくりに違いはあっても、権限を大幅に委譲して経営環境へ迅速な対応を図り、利益責任を明確にすることを通して経営者意識を高め全員参加経営を促す目的は一緒である。今回は一般的な部門別損益を取上げて責任会計の基本を学ぶこととしよう。

2 責任会計の基本様式を読む

表1の会社はラインライン事業がABCの3つあり、間接部門として総務経理を擁する本社がある。縦軸は売上高から変動費を控除して限界利益を、ここから部門固定費を控除して貢献利益を計算し、最後に本社費を控除して部門利益を表示している。

(1)売上高は、ABC各部門が社外に販売している場合には販売代金で良いが、製造部門が営業部門に販売したり、製造部門内で加工部門が組立部門に加工品を引き渡す場合など、いわゆる内部取引では部門間の振替価額を用いる。振替価額は市場価格がある場合にはこれを参考に、ない場合には標準製造原価に適切な利益を加算して決めることが多い。

(2)売上原価は、流通業の場合には仕入価額が、製造業にあっては製造原価がベースとなるが、いずれも社外からの仕入れについては取引価額で、内部取引については市場価格あるいは標準製造原価に適正利益を加算して決めることなどは売上高の場合と同様である。

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