立ち止まり検証することで道は見つかる

低価格販売から付加価値モデルへ転換

東京、神奈川、大阪を中心に、酒類・食品類の配達販売で安定的な成長を続けているカクヤス。浮き沈みの激しい業界動向のなか、先代から引き継いだ会社を大きく育て上げた佐藤順一代表取締役に、その軌跡を聞いた。

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「企業の強みは何か」と問われたとき、答えは二つしかないと思っています。それは、価格と価格以外の何か、つまり付加価値です。価格で戦う場合はシンプルで、値段の高い低いが消費者の物差しになり、経営自体も数ヶ月で赤字か黒字かはっきりするでしょう。一方、付加価値の場合は抽象的です。消費者によって価値の捉え方も違いますし、経営評価が見えるまで時間もかかります。

カクヤスは実は2000年頃までは価格で戦っていました。地域最安値を打ち出して集客するというビジネスモデルを作っていたのですが、バブル崩壊を機に付加価値モデルへと転換しました。

配達という付加価値を付けたディスカウントショップへ

私がカクヤスに入社したのは大学を出てすぐでした。社員数が16名だったので私は17番目の社員です。当時の売り上げは約7億円だったと記憶しています。

その頃のカクヤスは飲食店だけにお酒を卸している酒屋でした。飲食店は終業した夜の間に会社の留守番電話にオーダーを残すので、一日の最初の仕事はそのオーダーからの伝票起こしです。注文の品をトラックに積んで都内を巡り、預かっている倉庫のカギを使ってまだ無人の飲食店に商品を納めて夕方帰社します。すると今度は夜、出勤してきたママやオーナーから代金を回収するためにまた同じ道を巡っていくのです。折しもその頃はバブルに向かい駆け足で進んでいる時代です。商売はすこぶる順調。絶頂期には15億円を売り上げ、経常利益も1億円以上をはじき出していました。

しかし、バブルが崩壊すると同時に潰れていくお客さんが増え、不良債権がふくらんでいきます。1億円あった経常利益はあっという間に1000万円となり、来期はいよいよ赤字というところまで落ち込んでいったのです。さらに悪いことに、私が大学2年生の頃に父親が酒屋から転業したコンビニが4000万円以上の債務超過を負っていること、それがカクヤス本体からの貸付金になっていることを知ります。

債務超過の改善を模索する中で私は、当時、時代の寵児とされていたディスカウントショップに目をつけたのですが、そのロジックは、広い駐車場を有する大きな倉庫型の店舗で大量陳列・大量販売するというもの。駐車場もない小さなコンビニなど勝てるはずがありません。そこで「配達をするディスカウントショップ」を始めます。

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