都市部の災害に新提案 多発する水害に「機敏性」で対応

JR仙台駅前の複合ビル・仙台マークワンを、多発する都市型水害から守る次世代型緊急洪水防護システム「ボックスウォール」。導入後1ヶ月後に実際に威力を発揮した、その優れた機動性とは。

2015年9月の豪雨で仙台市中心部でも冠水する地域がみられた

昨年9月、関東と東北地方を襲った豪雨は、24時間雨量300ミリ以上という激しさで各地に甚大な被害をもたらした。宮城県も例外ではなく、仙台市中心部においても冠水する道路が随所に見られた。この日、JR仙台駅に隣接する複合ビル・仙台マークワンでは、浸水の被害を防ぐべく、新たに導入した次世代型緊急洪水防護システム「ボックスウォール」がその真価を発揮したのだ。

2008年に竣工した仙台マークワンは、多くのテナントが入るオフィス及び仙台パルコで、以前から豪雨の際には北側の道路が冠水する事案が多発していた。しかも、近年は地球規模の温暖化の影響で、ゲリラ豪雨の頻度が増え、従来の対策は100袋ほどの土嚢の常備という中、根本的な水害対策が急がれていた。

水害対策に求められるのは簡単かつ短時間での対応

1時間に30ミリの降雨量をひとつの目安として、その基準を超える場合は被害に備える体制となる。気象会社から精密なデータを取り寄せ状況を予測し、モニターによる監視を強化、巡回の回数を増やすなどの対応が取られていた。想定される被害でもっとも深刻なフェイズ3が「地階の電気室への浸水」である。ビル全体が機能停止に陥るこの事態だけは、なんとしても避けなければならなかった。被害が懸念される気象状況の場合は、土嚢を準備することになるのだが、実際に設置するかどうかの判断はその撤去までの労力を考えると容易ではない。

「土嚢はひとつの重さは5㎏ほどですが、実際以上に重く感じます。一度にたくさんの数を運ぶのは難しい作業でした」とパルコスペースシステムズメンテナンス事業部の浅羽正直氏。人手も時間もかかるうえに、その機動性の点でも課題があった。

浅羽 正直 パルコスペースシステムズメンテナンス事業部 仙台事業所 副所長

とくに近年は、想定をはるかに超えた大型災害が多発している。短時間に激烈な雨量が記録されるゲリラ豪雨もそのひとつ。高度に都市化した地域では、排水能力の限界を超えた雨量により、各地に冠水が起こり、地下の施設に流入するなどその被害は甚大だ。現場に火急な決断を迫る、こうした水害の頻度が確実に増加しているのである。状況把握と素早い判断、そしていち早く予防措置をとる機動力が重要になる。

2015年、未曽有の豪雨をボックスウォールで防水

「ボックスウォール」は、1枚3.4㎏と軽量で、扱いも簡単なため、少ない人員で短時間に浸水被害を防ぐことができる。素材は軽くて丈夫なABS樹脂。使用後は簡単な水洗いで、何度でも繰り返し使うことができる。

「軽くて運びやすく、設置も簡単。特に機動性が高いということは、先に使用していた協力会社から情報を得ていました」。水害についての防災対策が見直され、現場からの新たな提案も広く求められた。そうした動きの中で行われた新たな提案のひとつが、土嚢に代わるボックスウォールの導入だった。もともと防災意識の高い組織であったこともあり、ボックスウォールの優れた機動力が評価されて、現場の提案は積極的に受け入れられた。

ボックスウォールが納品され、設置訓練が行われたのが2015年8月のこと。関東東北に未曾有の被害をもたらした豪雨の発生はそのわずか1か月後のことだった。

ボックスウォールは、1枚が70㎝。それを重ねながら並べていくので、組み立ては簡単で、事前に1回触れておけば使用に迷うことはない。土嚢の場合はきっちり積み上げないと隙間から水が浸入してしまうため、積み方に習熟が必要だ。大量の出水が予測される場合には1段だけでなく何段も重ねなければならない。その点だけ考えても、誰がやっても優れた防水機能を発揮するボックスウォールは秀逸だ。置いただけで50cmまでの水の侵入を防ぐことができる。さらに、水圧によって安定する形に設計されており、ボルトで止めるなどの作業はいっさい不要なのだ。

当初の想定では、地下駐車場の防潮シャッターが作動しない場合、あるいはそれを超える水量が押し寄せた場合に、ボックスウォールを設置することになっていた。2015年9月10日の豪雨の際は、地下駐車場は防潮シャッターだけで問題なく防水ができたため、その分のボックスウォールは急遽、設置場所を店舗入り口に変えて使用することができた。

結局、店舗入り口を含めて、水が流入しそうな場所3箇所、合計30mにいたる範囲をボックスウォールで防水することができた。作業にあたったのは6名、設置完了までは15分足らずという素早さである。もちろん、水漏れは一切なし。ビルの入り口のゆるやかなアールに沿って曲線を描く機能的なデザインの水防フェンスは都市空間になじみ、ファッションビルの美観も損ねない。多くの人が注目し、ビルの関係者からは、豪雨後、問い合わせが相次いだという。

「予想はしていましたが、想像以上の機動力でした。ここだ、という場所に素早く運ぶことができますし、組立も簡単で、もちろん水が漏れることもまったくありませんでした」と実際に使ってみての感想を語る。優れた防災意識と先見性が、迫りくる災害を未然に防いだ好例である。

実際にボックスウォールを使用し、建物内に水が入るのを防いだ

 

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    環境機器事業部

  2. TEL:03-5414-8763
  3. URL:https://www.gadelius.com/

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