デザインで課題の本質を視覚化 『人口減少×デザイン』

本格的に人口減少時代に突入する日本社会。なぜ人口減少が起こり、どの程度減るのか、また減少する自治体ではどのような対策をするべきか。様々な議論が巻き起こる中、「デザイン」という切り口で地方自治体の人口減少問題の解決に取り組むのが、筧裕介氏だ。筧氏は、ソーシャルデザインチームissue+designの代表を務め、多様なアプローチで地域が抱える課題解決に取り組んでいる。

「人口減少の問題が議論される場が増えています。これからの日本を考え、議論する土台として、人口減少をデザインで表現することが必要だと思いました」

そこで、書籍『人口減少×デザイン』で、人口のシミュレーションと問題解決に向けた未来への提言を示した。本書で示されるデザインは、2つの意味を持つ。

「1つめは、問題の本質を捉えること。デザインで視覚化することで、問題の本質をあぶり出し、わかりやすく伝えることができます。2つめは、問題解決の行動を呼び起こすことです。アクションを起こすためのシミュレーションや問題解決のためのソーシャルデザインのプロセスは、人々の共感を呼び、共通理解となって、行動につながっていきます」

本書では、人口減少の3大要因として、(1)既婚率の低下、(2)夫婦あたり出生数の減少、(3)若年女性の絶対数の減少をあげている。

「人口減少はマクロな課題と捉えられがちですが、最終的な行動はミクロな範囲で考えていくべきです。若年層が働き、稼ぎを得て、結婚し、子どもを生み、育てられる社会を、地域ごとに考えていくことが必要です」

人口減少×デザイン
―地域と日本の大問題を、データとデザイン思考で考える。
筧 裕介(著)
英治出版
本体1,800円+税

地方から新ビジネスが生まれる

これまでは大企業が日本経済を引っ張っていた時代が続いたが、社会の変化が激しい中で、新しいイノベーションやモノが生まれなくなっている。一方で、地方の課題は明確であり、小さな経済圏の中に大きなポテンシャルが秘められている。

「日本全体や東京を変えることは難しいですが、地方の数千人、数万人のまちは個人の意識次第で変えやすい。農水産物、観光、自然などの資源も豊富で、初期投資少なく、新しいビジネスを始めるチャンスが眠っています。そのために人材が必要で、日本全体でゼロから事業を生み出す人材の育成がますます必要になっていきます」

筧 裕介(かけい・ゆうすけ)
issue+design 代表

 

今月の注目の3冊

リーン・スタートアップを駆使する企業

トレヴァー・オーエンズ(著)
オービー・フェルナンデス(著)
村上彩(翻訳)
日経BP社
本体2,000円+税

無駄のない起業の方法論「リーン・スタートアップ」。今、起業だけではなく、大企業の強みを活かした革新的な新規事業や新商品・サービスに、リーン・スタートアップの導入が進んでいる。この方法論を使うと、古い市場を守ることに固執している企業でも、新しい市場を発見して開拓するための新しい強力なツールを手に入れることができる。企業内イノベーションを実現可能にする一つの手法を紹介している。

中小・ベンチャー企業のための東南アジア進出戦略

大久保昭平 (編著)
中央経済社
本体2,800円+税

デフレや少子高齢化など日本国内市場の成長が望めない中、海外市場に注目が集まる。アジア新興国の市場成長により日本企業の進出も増えるが、成功事例紹介は大企業が大多数で、中小企業では応用できない戦略も多い。本書は、中小・ベンチャー企業を対象とし、東南アジアでの事業展開に係る事業戦略立案、ビジネスモデルの構築などを紹介。IT、サービス、製造業など業種別に、事業環境や進出のポイントも取り上げる。

HARD THINGS ―答えがない難問と困難にきみはどう立ち向かうか

ベン・ホロウィッツ(著)
滑川海彦 、高橋 信夫 (翻訳)
日経BP社
本体1,800円+税

起業も企業内の新規事業も予定通りに進まないことが多い。成功談を後から分析する書籍は多数あるが、本書はゼロから何かを生み出したい人が困難を乗り越えるためのヒントが書かれた一冊だ。著者は、シリコンバレー最強のベンチャーキャピタリストの一人として知られているベン・ホロウィッツ。起業において次々と深刻な困難に直面した経験を通して、うまくいかないときの思考や哲学、切り抜け方を紹介している。

 

名著

イノベーションと企業家精神

イノベーションと企業家精神 ―実践と原理
P.F.ドラッカー (著)
上田惇生、佐々木実智男(翻訳)
ダイヤモンド社
本体2,000円+税

「企業家精神とは気質ではなく行動である」。従来、「選ばれし者」と考えられていた経営者の資質に対して、後天的要因を軸として規範や思考構造をとらえたものである。ドラッカーは併せて「天才によるひらめきは学問領域ではない」としており、あくまで企業家としてあるべき本質的な姿を追求した不朽の名作である。

また、次の7つのイノベーション機会を挙げた。(1)予期せぬことの生起、(2)ギャップの存在、(3)ニーズの存在、(4)産業構造の変化、(5)人口構造の変化、(6)認識の変化、(7)新しい知識の出現。これらによって、新たな事業領域を画策、構築し得ると述べている。これは、事業構想大学院大学における、「人、技術、ビジネス、社会の洞察」を示唆するものであり、イノベーションの起点となるべき考え方である。

 

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