光電融合技術で 全体最適と個人の便益をリアルタイムに両立

IOWN構想で実現したい未来のために、カギとなるのが光電融合技術とディスアグリゲーション。MaaSでは、全体の最適化を図りつつ、個々のユーザーにとって快適な移動を提案する。ハード面だけでなく、個人の嗜好や心理もリアルタイムに計算して、未来の交通システムを作る。

NTTが未来の通信基盤として構想したIOWN。本連載の1回目・2回目では、NTT常務執行役員研究企画部門長の川添雄彦氏が、IOWN構想の全体像を概説した。3回目以降は、IOWN構想のより具体的なイメージや、これが実現した未来の姿を、同社のキーパーソンが解説する。

必要に応じて動的に組むシステム

IOWNの背景にあるのは、人類が抱える差し迫った課題だ。データ量の急増により既存のインターネットが限界を迎えており、電子デバイスの増加にともない消費電力は増え続けている。今後、世界のより多くの人が、より良い生活を送るためにはICTによる効率化が欠かせない。それと地球環境保全を両立するには、新技術による省エネの実現が必要だ。一方で、単なる課題解決に留まらないビジョンもIOWN構想には含まれている。技術進歩の結果を人間がストレスなく享受し、環境と調和した世界で生きていける未来の実現を目指しているのだ。

「IOWNで実現したい世界があり、その手段となるのが、光電融合技術とディスアグリゲーションです」と、同社IOWN推進室担当部長の荒金陽助氏は話す。

荒金 陽助 NTT研究企画部門 IOWN推進室
担当部長 博士(工学)

光電融合技術については、連載第1回目で詳しく紹介した。現在、コンピューターの演算処理には電子が使われているが、これに光を導入しようというもの。光を使うことで熱の発生を抑制でき、低エネルギーで高速の演算が可能になる。NTTによる基礎研究では成果が出ており、実用化が始まっているところだ。

もう1つのディスアグリゲーション(ディスアグリゲーテッド・コンピューティング)は、今あるシステムの各要素をいったんモジュール化し、場面ごとに必要に応じて再構成して協調させ、最適な形で提供することを目指すもの。様々な端末やIoTデバイスとクラウドを融合し、柔軟なコネクテッド・サービスとして提供する。各モジュールを使う時だけ起動させるようにすれば、エネルギー消費も抑制できる。ただしこれには、光電融合技術の実用化が不可欠だ。既存のコンピューターやインターネットでは、処理能力の限界、帯域不足による遅延や、セキュリティ面などの課題が山積している。

「既に、情報の伝送には光技術が導入されていますが、その導入範囲を拡大するだけでなく、演算にまで適用し、ディスアグリゲーテッド・コンピューティングを実現するために、光電融合の技術開発に取り組んでいます」と荒金氏はいう。

人の快適な移動とインセンティブ

光電融合技術と、ディスアグリゲーテッドコンピューティングが実現した際の利点が最も身近に感じられる事例が、「サービスとしての移動(MaaS)」への適用だ。現在、経路案内アプリから自動運転車まで、MaaSのための様々な要素技術の開発が進んでいる。観光地の電車、バス、タクシーなどをワンストップで利用できる観光MaaSでは、一般の人が参加する実証実験を実施するものも出てきた。

IOWNが構想しているMaaSは、全体の移動を最適化すると同時に、個人最適も満たすものだ。

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