住みやすい都市づくり『世界のコンパクトシティ』ほか注目の新刊

快適な暮らしの秘訣を探る

なぜ諸外国の都市はコンパクトで暮らしやすく、経済成長できるのか――
この問いに各国比較を通じ、日本のまちづくりに対する示唆を与えるのが本書である。

急激な人口流入で拡大を遂げた近代社会の都市は、しばしば郊外へ無秩序な拡大を遂げ、その現象は「スプロール化」と呼ばれた。道路の混雑や長時間の交通渋滞が慢性化し、こうした郊外への拡大を抑え、徒歩や自転車など環境負荷の少なく人の健康にもよい規模への都市整備(本書では「縮退」と表現)を進め、暮らしやすさを追求するのが、コンパクトシティの基本的な考え方である。

日本でも高度経済成長期に大規模な都市化が生じたが、人口減少や少子高齢化といった社会的要因、また大規模気候変動といった環境的要因が顕在化するに従い、都市のコンパクト化が行政現場の間で必要とされ、また住民の間でも「住みやすいまち」へのニーズが高まってきた。

日本に示唆的な施策を網羅

この背景を踏まえつつ、本書は単なる外国事例の紹介でなく、日本に示唆的なコンパクト化施策を具体的に提言する。例えば、アムステルダムやコペンハーゲンからは、空間をどう策定し計画するか、また、メルボルンやストラスブールからは、移動手段(交通)をどう整備しスプロール化を抑制してきたか、等だ。また総じて、ドラスティックな革新でなく、住民との対話を通じた合意をじっくり進める点も触れられる。

本書に引かれた事例は大半がヨーロッパ諸国、気候帯で言えば温帯地域に集中する。対して、アジア・南米・アフリカ諸国など熱帯・亜熱帯地域の都市では、急速なキャッチアップ型工業化の影響も相まって、人口流入が急激なピッチで進んでいる。その変化は目覚ましく、例えばインドネシア・ジャカルタを主な事例に『講座 メガシティ』(村松 伸・加藤 浩徳・森 宏一郎、東京大学出版会)などの研究成果も世に出されるに到っている。質的に異なる変化の進むそれら諸国の都市が近未来に迎えるであろう課題にどう取り組むのか。社会の実勢に即しつつも「都市を賢く縮退するしくみ」をグローバルにどう進めていくかは、更なる課題であると共に新たな世界への可能性と言えるだろう。

 

谷口 守(たにぐち・まもる)
筑波大学システム情報系社会工学域教授

 

世界のコンパクトシティ

――都市を賢く縮退するしくみと効果

  1. 谷口 守(編著)、片山 健介・斉田 英子・髙見 淳史・松中 亮治・
    氏原 岳人・藤井 さやか・堤 純(著)
  2. 2019年12月刊行
  3. 本体2,700円(+税)

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