知財戦略をめぐる世界の潮流 特許からデザイン・ブランドへ

ものづくりの世界では、機能やスペックを超えて、背景に流れる歴史やストーリー、保有することで得られる感動が、ビジネスの成否を分ける時代になった。知財の世界も同様に、技術や特許などの機能から、デザインやブランドがより重要になってきている。

さて、見えない資産の話を詳しくする前に、なぜ21世紀の収益構造がKnowledge Basis Economyなってきたかを世界の潮流を辿って見てみましょう。

TPPの交渉でも知財が最後に残った重要なテーマでしたが、米中貿易戦争の最大かつ最も重要なテーマの一つは、知財です。これは、単に特許やブランドのライセンス料を払えという話ではありません。これからの世界では、モノより知が収益を作り出すので、そのルールや覇権をどこが握るかという点がとても重要なことなのです。

21世紀になって、世界で大きな2つの構造的な変化が起きています。それは、20世紀に良いものを作り、世界を席巻した日本の地位の下落に繋がる大きな要因でもあります。

良いものを作れば
高く売れるという時代の終焉

2つの大きな構造の変化とは、何でしょうか? 1つ目は、需要と供給のバランスが変わってしまったということです(図1参照)。

図1 需要と供給のバランスのイメージ

出典:著者作成

 

20世紀は、需要が供給を凌駕していました。よって、良いものを作れば、その価値に見合った高い価格で売却ができ、一定の機能があれば、そこそこの価格で販売ができました。ものづくりの真価が発揮されて、良いものを作れば売れるという時代でもありました。

21世紀になって、中国をはじめとした新興国の急成長により、供給が需要を超えていきます。競争が激しくなり、常に低価格品の価格に引っ張られ、単に良いもの、高機能なスペックでは、高価格を維持できなくなってしまいました。

さらに、追い打ちをかけているのが、2つ目の構造的な変化、インターネットにより繋がってしまう時代の到来です。インターネットが普及していない時代では、価格を最初はメーカーが、そして次に量販店がコントロールすることができました。競争が激しくなっても一定の利益を確保できたのです。

しかし、インターネットの普及で、全ての価格が白日の下にさらされます。価格.com、アマゾン、楽天や様々なサイトを見れば、どこが安値で売っているかが分かります。そして、翌日は最安値の会社が変わっています。毎日、毎日、価格が下がり続ける訳です。即ち、日常的に価格下方圧力が構造化してしまいました。良いものを作れば高く売れるという時代の終焉です。

needsからwantsへ
「良いもの」の概念が変化

さて、21世紀は、主権者が供給から需要に、メーカーからエンドユーザーに移った時代でもある訳です。しかし残念ながら、日本の多くの会社は、21世紀になっても良いものを作れば売れるという20世紀の成功体験に浸り、基本的にはProducts outという考えに固執していたと思います。

全文をご覧いただくには有料プランへのご登録が必要です。

  • 記事本文残り62%

月刊「事業構想」購読会員登録で
全てご覧いただくことができます。
今すぐ無料トライアルに登録しよう!

初月無料トライアル!

  • 雑誌「月刊事業構想」を送料無料でお届け
  • バックナンバー含む、オリジナル記事9,000本以上が読み放題
  • フォーラム・セミナーなどイベントに優先的にご招待

※無料体験後は自動的に有料購読に移行します。無料期間内に解約しても解約金は発生しません。