「見えない資産」が将来を決する 経営者が取り組むべき知財戦略
会社の価値は、見えない資産(≒知的資産)で決まる。世界的に見ても、企業価値全体に占める見えない資産の割合は、見える資産を圧倒的に上回っており、知財をどう活用するかは企業の将来を左右する。経営者は、見えない資産の活用を含めて、経営戦略を考えなければならない。
皆さんは、自分の会社の本当の価値を知っていますか? 時価総額、総資産、Net Worth(純資産)と色々な指標があるでしょう。多くの人は、PLやBSもしくはCF等の財務諸表上の数字を思い浮かべることと思います。
しかし現在において、会社の価値というのは、見える資産よりも見えない資産がはるかに大きくなってきています。今回は、見えないからわからないという、見えない資産のお話です。
見えない資産価値が
見える資産価値を陵駕
第2回でも紹介しましたが、シカゴにあるOcean Tomoという特許のオークションを世界で最初に始めた知財の運用を行っている会社が表1のような試算をしました。
1975年の当時、S&P 500社の時価総額のうち、見える資産すなわち総資産が占める割合は80%で、見えない資産の割合は20%でした。経営者が重要視する指標の一つにROA(Return on Asset、総資産利益率)があり、長年経営者にとっては目に見える資産、資金、土地、在庫等を有効に使って収益を上げることが重要視されてきました。
ところが2015年には、時価総額の中で、見える資産の割合はわずか15%となり、見えない資産の割合が85%になっています。会社の価値は、見えない資産で決まっているということです。よって現代では、ROAの意味するところは、資金や土地や在庫の運用なのではなく、見えない資産を最大限に活用することが、本質的なROAや会社の価値を高めることにつながっていきます。
日経新聞によると、2017年の世界の見える資産価値は30兆ドル、見えない資産価値は40兆ドル、既に見えない資産が見える資産を凌駕しているのですね。難しいのは見えない資産、その多くを知的な資産が占めているわけですが、見えない資産とは一体なんなのでしょうか? そして、どのように運用したら良いのでしょうか?
経営者が会社の将来像を考えて、事業戦略を立てる際に、見えない資産の活用を含めて考えていくことで、早期の収益化やグローバルへの事業拡大を可能とします。現在では、経営としての知財戦略が不可欠となっているわけです。そして、会社の最大の資産を運用する知財戦略は、CEOをはじめとする経営者の仕事なのです。
表1 S&P 500社の時価総額における「見える資産」「見えない資産」の割合
見えない資産の評価に失敗した
海外の買収事例
もし、経営者が、自分の会社の本当の資産価値を知らなかったらどのようなことが起こるのでしょうか? また、他の会社を買収したり、資本参画する際に、対象となる会社の本当の価値を正確に算定できていなかったらどうなるでしょう? 過剰なのれん代を払っていませんか? もしくは、自分の会社や事業をとても安価で売却をしていないでしょうか? 財務諸表をベースに会社の価値を考えていませんか?見えない資産の価値を考えたことはありますか? M&Aにおいて、見えない資産を把握したかしないかで起きた恐ろしい話があります。
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