2019年7月号
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パイオニアの突破力

日本舞踊の若きリーダー 伝統の革新へ「敷居は低く、格式は高く」

藤間 勘十郎(日本舞踊宗家藤間流家元、歌舞伎舞踊振付師)

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日本舞踊の五大流派といえば、花柳、若柳、西川、坂東、そして藤間流だ。中でも藤間流の本家を継承する宗家は、唯一、“歌舞伎舞踊振付師”という肩書を担う血統だ。3歳で初舞台を踏んで以来、宗家の道をひた走る日本舞踊界の若きリーダー、藤間勘十郎。新時代を迎え、新たに打つ次の一手とは――?

文・油井なおみ

 

藤間 勘十郎(日本舞踊宗家藤間流家元、歌舞伎舞踊振付師)

自分もひとつの勘十郎の通過点
それぞれの知恵と感性で守り伝える

「生まれたときから、母や祖父の姿を見ていましたから。プロ意識というより、好奇心。踊ったり跳ねたり真似て、子どもの遊びとしてやっていたのが、いつの間にか仕事になっていた、そんな感じです」

時折、愉快そうに笑いながら饒舌に語る。その姿は舞台で見せる匂い立つ艶やかさとはまた別の華やかさがある。

22歳という若さで藤間流の宗家を継いだ、八世 藤間勘十郎。日本舞踊家であるのみならず、歌舞伎の振り付けはもちろん、舞台の演出、脚本、作曲、演奏までこなす稀有な存在だ。

現在、39歳ながら、長く藤間流を率い、積み上げてきた芸歴は名実ともに厚みがある。

「私が10歳のときに祖父が亡くなったんです。その頃からなんとなく、宗家を継ぐという覚悟のようなものはできていた気がします」

中学生から、当時、七世 勘十郎だった母の弟子のひとりとして、全国の舞台について回り、その頃から母の名で振り付け仕事も経験した。高校を卒業してからはひとり立ちし、自分の名前で振り付けの仕事もこなした。

「勘十郎を襲名するまでは、伝統的な歌舞伎の演目に代々伝わる振りを合わせる仕事が多かったのですが、襲名後は一から自分で作らなければいけない仕事が次々舞い込んで。大変でしたが、プレッシャーはなかったですね。むしろ、襲名からしばらくは、大御所と若手の方は私、その間の、母と同じ年代の方々は母の担当だったので、その方々からご指名をいただけるようになったときは、うれしかったですね」

母と同じ世代の役者の中でも、とくに、2012年に亡くなった十八代 中村勘三郎の仕事が多かったという。

「おかげで小曲から大きな出し物まで、いろいろ経験させてもらいました」

舞踊家としても振付師としても天才と誉れ高い亡き六世の祖父、そして、テレビや新派など幅広い分野でも振り付けを手掛けた七世の母から継いでの勘十郎の名。人気役者たちと渡り合う日々で比較を恐れることはなかったのか。

「僕は小さい頃から資料おたくなんです。母の舞台の資料をこっそりのぞき見たり、昔の資料を探して調べたり。ですから、自分のもの作りの原型は、過去の作品のいいとこ取り(笑)。そこに自分のアイデアや感性をのせていくという本歌取りです。とはいえ、祖父や母など過去の作品と自分の作ったものを比べ、同じように作らねばという感覚はありません。同じ名前を継いでも、それぞれに個性がありますから」

小学校から高校までプロテスタントの学校に通っていた勘十郎は、宗教の授業で聞いた『タラント』という話が今も指針になっているという。

「豪商が旅に出るので、3人の召し使いを呼び、Aには5タラント、Bには3タラント、Cには1タラント預け、戻るまで守るように伝えました。Aはそれを元手に商売をして10タラントに、Bも同じく6タラントに増やしましたが、Cは預かったものだからと大事に土に埋めて守ったんです。帰ってきた豪商はそれを聞いて、Cに『お前は不忠者だ』と言うんです。何だ、使っていいのかよ、と思いますよね。タラントというのは、“タレント”つまり“才能”の語源だというんです。これは僕らの世界では一番大切なことだな、と子ども心に感じました。伝統だからと抱え込んでいたら、始まらない。守ることとは相反することに聞こえるかもしれませんが、何かをプラスして切り拓いていかないと、次の時代には伝わりません。僕は長く続く“勘十郎”の通過点。それぞれの勘十郎がその時代に応じて考え、切り拓いていくことが伝統を守ることになると思うんです」

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