国立映画アーカイブ  6番目の国立美術館は「将来の観客」をつくる

2018年4月、6館目の国立美術館として開館した国立映画アーカイブ。日本のナショナルフィルムアーカイブとして、映画の収集・修復や上映、教育事業や国際交流事業を行い映像文化を後世に残す役割を担う。

京橋の国立映画アーカイブ本館。2つの上映ホールと展示室、図書室を持つ

2018年4月、6番目の国立美術館として、国立映画アーカイブが発足した。映像文化を保存し、将来の発展に向けた教育を行う機関だ。2017年度まで、国立映画アーカイブは、東京国立近代美術館フィルムセンターとして活動をしていた。海外では、国立のフィルムアーカイブ機関が映画の収集、保存を行い、自国の映像文化の保全に努めている国も少なくない。日本でも国立の専門機関の設立が、約半世紀にわたって繰り返し議論されていた。国立映画アーカイブの発足は、国内の映画関係者の強い願いが実現したものといえる。

岡島 尚志(国立映画アーカイブ館長)

映像文化の「記録保管所」

国立映画アーカイブのミッションは、(1)映画の保存・公開、(2)映画に関する教育の提供、(3)映画を通じた国際連携・協力の拠点となること、3つだ。「アーカイブ」の名前の通り、映画の歴史を全て集積させることを目標に掲げている。芸術作品であり、文化遺産であり、歴史資料である映画を、できる限り多く集める。特に日本映画の収集は最優先されている。

映画の保存・公開では、フィルムセンター時代から継続的に整備してきた施設を引き続き活用する。国立映画アーカイブの東京・京橋にある本館では、2つのホールでテーマごとに選ばれた作品の上映を行っており、チケットを購入すれば鑑賞できる。また、神奈川県相模原市の分館には、フィルム保管に適した温度・湿度を保てる保管庫を備えている。国立映画アーカイブ所有の4本(3作品)の重要文化財指定映画フィルムも、相模原分館の専用保存庫で保管されている。

収集した古い映画フィルムのうち、燃えやすい素材を使った可燃性フィルム、劣化の激しいフィルムは長期保存と上映のための複製を作成する。褪色や傷のあるフィルムについては、写真化学的な修復に加えて、デジタル技術を活用した最適な復元法を研究してきた。2013年には、松竹と共同で、1958~62年に公開された小津安二郎監督のカラー映画を復元し、公開当時の色彩を再現した。

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