すべての行動が挑戦となる。チャンピオンとして、選手をけん引する力
「マイナースポーツの挑戦」は、それだけでマイナスからのスタートだったりする。ともに技能を高める仲間がおらず孤独であったり、練習環境や金銭面などのさまざまな問題が重なり、選手としての道から脱落してしまう選手も多い。国内競技人口約100名という狭い世界から飛び出した女子ボクサー 藤岡奈穂子は、世界王者の座を獲得し、“マイナー競技の選手でも輝けるのだ”と証明した。各選手が広い世界で輝ける環境をつくるため、チャンピオン・藤岡が目指すものとは。
文・小島 沙穂 Playce
国内の女子ボクシングの競技人口は、プロアマ合わせて100人ほどだという。男子が約6,000人であるのに比べると、その少なさがわかるだろう。ジムによっては、女子に力を入れている場所もあるが、ほとんどは各地のジムで男子選手に交じって練習を重ねているのが現状だ。
そんな女子ボクシング界で、日本はもちろん世界で活躍している選手がいる。藤岡奈穂子はその一人。アマチュア10年、プロ6年目のベテラン選手である。
2015年3月、インターナショナルスーパーフライ級王座をかけてマリアナ・フアレスとの一戦が行われた。決選の地は相手の母国であるメキシコ。完全なるアウェーという不利な状況をものともせず、藤岡の持ち味であるスピードと強打で試合の流れを引き寄せ、2-1の判定勝ちでフアレスを下し、タイトルを奪取した。39歳という年齢でありながら、世界の強豪とリング上で対峙し続ける彼女は、日本の女子ボクシング界をけん引する存在だ。
最高のコンディションをいつでも引き出せるように
藤岡のトレーニングは、朝のロードワークから始まる。午前中には取材対応、夕方からはジムでのスパーリングやフィジカルトレーニングとなる。
「実は私、練習の時に準備運動をあまりしないんですよ。そのままスパーリングなどに入るんです」
アップなしでハードな動きに入れるものなのか。驚いて理由を聞くと、彼女は次のように答えた。
「準備運動をしないのは、いざという時にアップをしなくても戦闘態勢に入れる身体を作っておくため。海外戦では、前の試合が伸びたり、短期決戦で終わってしまったりして、試合の開始時刻が大きくずれることがよくあります。アップをしてから時間が経ってしまったり、どんな状況でもリングにあがったらすぐに戦うことができるよう、普段から感覚を鍛えて調整をしています。また、『筋肉を伸ばし過ぎると、かえって筋肉が休んでしまうから避けたほうがいい』とアドバイスをもらったのも一つの理由ですね」
常に戦闘モードへ入ることができるのは、ボクサーにとって非常に大きなアドバンテージとなる。元々オンオフの切り替えは得意だったと彼女は言うが、日々の練習で培ってきた自分のテクニックやパワーを信じているからこそ、スッと試合に入りこむことができるのだろう。
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