イノベーションを生んだ いっさい妥協しない心意気

大田区にある北嶋絞製作所は、国産H-Ⅱロケットや国産戦闘機などの部品、巨大なパラボラアンテナなどを手掛ける従業員24人の町工場だ。円盤状の金属板に「へら」という棒を押し当てて金属を加工する「へら絞り」の技術を求め、国内外から依頼が絶えない。創業時はやかんや鍋を作っていた同社が、いかにロケットの部品を開発できるようになったのか。

製品が自然と顧客を呼ぶ

戦後間もない昭和22年に創業した当社は、今年で66年目を迎えます。

三代目・北嶋實代表取締役

16歳年上の長兄が立ち上げ、二代目は次兄、三代目は私と、兄弟3人で切り盛りしてきました。

今でこそ国産H-Ⅱロケットの補助ロケットの先端部分、ジェット戦闘機の補助燃料タンク、パラボラアンテナなどを製造していますが、創業時は近隣から頼まれたやかんや鍋、弁当箱を作っていました。

かといってロケットを作るためにアイデアを出してイノベーションを行ったわけでも、特別な売り込みをしたわけでもありません。実は66年間一度も営業したことがなく、社内に営業の人間がいたこともないのです。製品が私たちのかわりに「営業」してくれて、今があります。

妥協せず、顧客の期待を上回ろうと、目の前の仕事に懸命に取り組んでいたら、自然とイノベーションが起こっていたということだと思います。

(左)日本の伝統工芸などを用いたプロダクト・プロデュースを手掛ける丸若屋、長谷川挽物製作所らと共同で開発したチタンのビアタンブラー「ロケット」。チタンは他の金属に比べ、何倍も加工が難しいという。1つ1つ手作業で加工する
(真中)北嶋絞製作所で加工された金属が、ロケットやジェット戦闘機などに使われている
(右)創業者の長兄が、長野の知人から譲り受け、戦後の満員電車でなんとか持ち帰ったモーター。この1台でへら絞りを行うところから始まった

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