コーヒーとスペクトル
コーヒーブレーク
大学院の近所に、時々、息抜きに立ち寄る珈琲店がある。青山通りに面したビルの細い階段を上った二階にあり、他では味わえないコーヒーを楽しむことができる。この微妙な違いはデータで表現できるかなどと無粋なことを考えた時に、以前に興味深く関わったスペクトルデータベースのことを思い出した。複雑な情報や信号をその成分に分解し、特定の成分の大小に従って配列したデータをスペクトルデータと総称するが、全体の構造を要素の特性で説明できるような課題の場合には極めて強力な手法なので、以下、気分を変えるためのコーヒーブレークとして紹介することにする。
それは遡ること三十年以上も前のイラン政変に起因する同国からの石油輸出が全面的にストップするという第二次オイル・ショックの頃の研究である。当時は先端的で利用者も少なかったコンピュータグラフィックス仲間が、同じく極めて先端的な技術であったNMR:Nuclear Magnetic Resonance核磁気共鳴の技術をコーヒー豆の分析を行った。香りが非常に高く繊細な味とのブランドを確立しているジャマイカ産のブルーマウンテンと強い酸味と甘い香りに特徴があるとされるタンザニア産キリマンジャロの違いを明らかにしようとしたのである。
科学を超えて
このNMRという技術は、強力な磁場の中に物質を置くと物質中に含まれるH-1やC-13の原子核が化学結合の微妙な違いを感度良く反映して固有の周波数で振動するため、分子構造を決めるのに有効である。
全文をご覧いただくには有料プランへのご登録が必要です。
-
記事本文残り64%
月刊「事業構想」購読会員登録で
全てご覧いただくことができます。
今すぐ無料トライアルに登録しよう!
初月無料トライアル!
- 雑誌「月刊事業構想」を送料無料でお届け
- バックナンバー含む、オリジナル記事9,000本以上が読み放題
- フォーラム・セミナーなどイベントに優先的にご招待
※無料体験後は自動的に有料購読に移行します。無料期間内に解約しても解約金は発生しません。