ハワード・シュルツが描く未来像

創業以来、スターバックスを牽引するシュルツCEO。その経営手腕の強みは、どこにあるのか。そして、今後、同社をどこに導こうとしているのか。

スターバックスの実質的創業者、ハワード・シュルツ氏はシアトルの一コーヒー豆販売店にすぎなかった同社を、世界的な規模のコーヒー・チェーンに成長させた。

ブランドづくりに3つの特徴

中央大学ビジネススクール(大学院戦略経営研究科)の田中洋教授は、シュルツ氏がスターバックスというブランドを作り上げるうえで、3つの特徴的なポイントがあると語る。

「一つは、着想の鋭さです。シュルツ氏がイタリアのエスプレッソ・バーに感銘を受け、それをアメリカに持ち込みましたが、イタリアに旅行するアメリカ人はおそらく毎年数十万人はいるでしょう。しかし、エスプレッソ・バーをアメリカに持ち込むというアイデアを思い付いたのはシュルツ氏だけでした。直感的にそこにニーズがあるのを見抜いていたのだと思います。ブランドづくりの一番の基礎は、どの事業に、いつのタイミングで、どういう形で参入するか。シュルツ氏は、目の付け所が秀逸でした」

2つ目に挙げるのが「状況に応じて戦略を見直す柔軟性」だ。

「当初シュルツ氏が構想していたようなイタリア的な要素、例えば、オペラの音楽などは結局排除されました。当初の構想をローカライズした結果、スターバックスの成長はもたらされました。日本に進出したときも同様です。銀座に1号店を開く際には、日本の喫煙率の高さを考えて、オープン直前まで喫煙可能にするかどうかを議論していたといいます。ニーズに合わせるか、それとも自身のコンセプトを貫くべきか。絶対的な正解がない問題に対して、その場その場で最適の答えを出していくのが経営の実態です。そうしたせめぎ合いの中で、ブランディングは進められるのです」

そして、3つ目が「価格帯を高くしたこと」である。

「値段によって、客層は変わります。ユーザーにとっては、店舗の雰囲気がいいという漠然とした理由以上に、自分たちが好む客層が集まっていることに価値を感じる。スターバックスを好む人たちは、どういうタイプの人なのかが明確で、ブランドづくりに成功しています」

ジュースで新業態を展開

今後、シュルツ氏は、スターバックスのブランドに魅力を感じる顧客層をどう拡大していくのか。

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