宅配便会社対決ヤマトvs佐川 全産業のEC化に備えた次の一手
コロナ禍に伴い「全産業のEC化」が加速する中で、宅配便大手2社の業績が好調だ。一方で、人海戦術に頼ったサービスは限界を迎えている。業務のDXやデータドリブン経営の推進などへの2社の取り組みを比較した。
デジタル化の加速で進化中の大手2社
コロナ禍による外出自粛要請などを背景に、全産業でEC化が加速し、宅配荷物数は大幅に増加した。宅配便サービス国内シェア42%、業界最大手のヤマトホールディングスの宅配便取扱個数は初めて20億個を超え、2021年3月期営業収益は前期比4.0%増の1兆6958億円、最終利益は2.5倍の567億円と、いずれも過去最高を記録した。佐川急便を傘下に持つ業界2位のSGホールディングスも、営業収益が1兆3120億円、営業利益が1,017億円、最終利益が743億円と、やはりいずれも過去最高となっている。
ヤマトホールディングスは、2021年4月から経営体制を刷新し、リテール、法人部門を構成する4つの「事業本部」と、輸送機能、デジタル機能など4つの「機能本部」に集約した。現在、2020年に策定した中長期経営のグランドデザイン「YAMATO NEXT100」のもと、2024年3月期を最終年度とする中期経営計画「Oneヤマト2023」を進めており、全産業EC化などの急速な事業環境の変化への対応力を強化している。
特に注力しているのはデータ収集・分析に基づく「データドリブン経営」で、需要や業務量の予測精度向上をふまえて、拠点の再配置、適正な人員・車両配置、自動化を進め、業務効率化と現場の負荷軽減を狙う。
一方、SGホールディングスは、宅配事業にとどまらず、物流業界全体をターゲットに、流通加工、通関、フォワーディング、不動産、金融といった様々な機能によって、川上から川下に至る幅広い領域にサービスを提供できる体制が強みだ。2020年稼働を開始した東京都江東区の大型物流施設「X-Frontier」も、仕分け能力の大幅な向上に貢献している。グループ全体から各領域の専門スタッフを集め、顧客それぞれの物流課題にカスタマイズされたソリューション提供を目指す「GOAL」や、メディカル物流、大型物輸送など様々な輸送ニーズに柔軟に対応する「TMS」といった取り組みも、宅配便に次ぐ事業の大きな柱となりつつある。
DXでは、特にドライバーの集配実績や出庫・帰庫時間などの行動をデータ化・可視化して人員配置やコースの改善につなげ、生産性を向上することに取り組んでいる。
少子高齢化と人口減に反比例するように増大する宅配取扱個数、そしてコロナ禍がもたらした生活様式の変化は、物流業界のDXをますます加速しており、ビッグデータ利活用の重要性はかつてなく高まっている。暮らしと産業、社会全体の動脈・静脈としての宅配業が今後どのように進化していくのかが注目される。
両社概要
ヤマトホールディングス
設立 | 2005年( 1919年 大和運輸創業) |
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本社 | 東京都中央区 |
代表 | 長尾 裕( 代表取締役社長) |
資本金 | 1272億3400万円 |
従業員数 | 22万4000名 |
事業概要 (2021年3月時点) |
●デリバリー(10社):宅急便、クロネコDM便など ● BIZ- ロジ(48社):宅急便にロジスティクス、メンテナンス・リコールなどの機能を組み合わせた事業 ●ホームコンビニエンス(1社):引っ越しサービスなど ●e-ビジネス(3社):情報、物流、決済の融合 ●フィナンシャル:通販商品代金回収など ●オートワークス(5社):車両整備サービス ●その他(10社):企業間のボックス輸送 |
宅配便サービス国内シェア | 42%(第1位) |
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物流拠点 | 約200 |
宅急便センター | 約3, 700 |
宅急便年間取扱量 | 約17. 9億個 |
セールスドライバー | 約6万人 |
EC商品配送パートナー(EAZY CREW) | 1万人超 |
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