地殻変動の測定や核融合研究に貢献 ネットにできない未来を実現

光技術を用いて、大容量・低遅延、かつ低消費電力での情報伝達や高速演算の実現を目指すIOWN構想。社会を支える基盤から、医療・教育・金融など複雑で高度な応用分野まで、大きなインパクトがある。新型コロナ後、急速にデジタル化を進める社会のニーズを満たすために、構想のいち早い実現を目指す。

川添 雄彦(NTT 常務執行役員 研究企画部門長)

NTTが2019年5月に提唱したIOWN(Innovative Optical and Wireless Network)構想。光技術を情報処理に活用することで、既存のICTの限界を突破し、大きな変革を社会にもたらすことを目指している。連載第1回では、NTT常務執行役員研究企画部門長の川添雄彦氏が、IOWN構想の基盤となる光電融合型の集積回路や、それを用いた現実世界の精密なシミュレーションについて語った。第2回では、IOWNのさらなる社会実装に向けた展望をまとめる。

社会の基盤をよりよく変える

IOWN構想では、インフラから医療応用まで、様々な場面でより良い変化を起こすことを目指している。いくつかは、社会の最も基本的な基盤に関わる構想だ。例えば「時間」。

時間を正確に測る時計は、地球の公転・自転を利用したものから発展し、より精度の高いものを目指して研究が進んできた。1955年に発明されたセシウム原子時計は3000万年に1秒も狂わない正確さを持つ。さらなる精度を出せる時計が、東京大学教授の香取秀俊氏が2014年に実現させた「光格子時計」で、300億年に1秒未満の誤差という正確さを誇る。

ここまでの精度があれば、通常では考えられないものまで測定できるようになる。例えば一般相対性理論によると、重力が強いところでは時間がゆっくりと流れる。つまり同じ建物の上階と下階でも時間の流れが違うことになるが、その差は非常に小さい。この小さな違いを、光格子時計は測定できる。

「光格子時計を2地点に設置し、時間の進み方の違いを測定すると、標高差がセンチメートル単位で測定できます。各地に設置することで、広範囲に現象を把握できます。これが実現すれば、微妙な地殻変動やマグマの動きなど、地震大国日本にとっては非常に重要なデータが取得できます」。

衛星測位システムと組み合わせた標高データは、スマートモビリティの実現などでも重要だ。光格子時計をIOWNでつなぐことで、他にも新しいビジネスの可能性があるとNTTでは期待している。

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