「知の複合情報」から見える 詳細で具体的な未来

特許や論文などの技術データと、科研費やスタートアップ投資額などの金融データを分析することで、詳細で具体的な未来が見えてくる。定量化が難しかった『知』と『人』が可視化できるようになってきた今、そこから読み取れる情報は、経営戦略や投資戦略を考えるうえで有用となる。

知のデータには
未来への示唆が含まれる

前回は特許を中心に何が分かるかを見てきましたが、今回もAstamuse社の協力を得ながら、未来の何が見えるかを見ていきましょう。同社は、世界中から収集した膨大なデータを基に様々な分析をしています。

収集した特許、論文、ニュースと言った技術データと科学研究予算、クラウドファンディング、スタートアップの投資額といった金融データを基に分析していくと、かなり多くのことが分かります(図1)。

図1 データの種類とそれが示す未来

出典:経済産業省「令和元年度内外一体の経済成長戦略構築にかかる国際経済調査事業 調査報告書」

 

ニュース、知財、論文は過去のことでもあり、そこに表されている最先端の内容は近未来を示唆してもいます。一方で、お金の動きに目を向けてみましょう。クラウドファンディングは現在から近未来を、ベンチャー・スタートアップも現在から未来を、そして科学研究費は近未来から一歩先の未来を示している可能性があります。

これらのデータを世界中から集めて分析することで、未来が予測できるかもしれませんし、また、日本と海外、他社と自社を比較することで、世界の中で自分たちがどのようなポジショニングにいるのかを把握することができます。

先端技術に関してマッピングすると、図2のようになります。食と健康分野やプラスチック問題の解決が早そうなことは、日々のニュースでも感じられるかもしれません。一方で、私の気がかりな認知症等の長寿社会での課題解決は、もう少し先になるということです。

図2 先端領域を産業的・時間的観点でマッピング

出典:経済産業省「令和元年度内外一体の経済成長戦略構築にかかる国際経済調査事業 調査報告書」

 

分析できる分野や分析のメッシュの細かさを絞ることで、より具体的で詳細な未来を表すことができるようになります。図3は今後重要な技術であるVR・ARなどの仮想現実、高齢化や認知症対策等に関連する脳波応用・感性工学、Googleが発表した量子コンピュータを示したものですが、2~3年後を考えるのか、それとも5年後、10年後を見据えての投資なのかの判断もしやすくなりますね。

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