南青山に出現した緑の芝生 貸オフィスとカフェでにぎわい創出

2018年10月に南青山一丁目に「シェアグリーン南青山」が誕生して半年。緑豊かな広場を中心としたカフェ、ショップ、スモールオフィスが融合し、新たなにぎわいの空間として地域に定着している。

東京メトロの青山一丁目駅から乃木坂駅方面に向かうと、青山公園や青山霊園など、都心の中にあって多くの緑に囲まれたエリアが続く。青山一丁目駅と乃木坂駅のほぼ中間地点に「シェアグリーン南青山」が2018年10月にオープンした。

まんなかに大きな芝生の広場があり、平日の昼間でも子供連れの親子や犬を散歩に連れている姿が見られる。広場の周りには、イベント会場にも使えるこだわりのカフェ「Little Darling Coffee Roasters」、施設内の植栽として実際に展示されている観葉植物を購入することができるGREENマーケット「SOLSO PARK」、花のセレクトショップ「ALL GOOD FLOWERS」が並んでいる。また、隣接してスモールオフィスとして活用できる「LIFORK MINAMI AOYAMA」がある。

都心に残る広大な土地

シェアグリーン南青山は、NTT都市開発が設立した際に親会社であるNTTより譲り受けた土地。NTT都市開発は、電電公社が民営化した際に、保有していた都心の遊休地を譲り受け、オフィスや住宅として開発してきた。民営化して30年余りで大きな物件はほぼ開発がおわり、都心で残っていた数少ない土地が南青山だった。隣りが都立青山公園であり、本土地も都市計画上の指定により、大規模な建物が建てられない厳しい制限があった。そのため1万6000m2の広大な土地は、長年、宅配便の集荷センターや、2階建ての事務所、住宅のモデルルームなどとして使われていた。その後、新たな制度等ができ、大規模な開発できる可能性がでてきたものの、実現までには長い時間を要するプロジェクトになることが見込まれている。

社内新規事業として提案

南青山の有効利用を企画提案したのがNTT都市開発の開発本部開発推進部課長代理の宗慎一郎氏。宗氏は約5年前に、社内の新規事業として、老朽化したオフィスビルをコンバージョンして、働く場(シェアオフィス)と暮らす場(サービスアパートメント)を兼ね備えた施設に生まれ変わらせる事業計画を提案、実現させた実績を持つ。九段下にオープンした「HIVE TOKYO(ハイブ・トーキョー)」は人気を博している。

宗 慎一郎(NTT都市開発 開発本部 開発推進部 担当課長代理)

その宗氏が着目したのが南青山の敷地であった。

「南青山の敷地は、数か所にわけて賃貸契約をしていましたが、契約終了時期が重なり、1万m2のまとまったスペースが確保できるタイミングがありました。社内でも活用方法について検討はされていました。せっかくのチャンスではあるものの、本格開発にはまだ時間がかかる状況でした。それまでの間、どう活用するかが課題でした」と宗氏。

「私は社内で後輩と2人、のちにもう一人巻き込んで3人でいろいろアイデアを出しました。同時にいろいろなところにヒアリングに行って、実現できる企画をつくっていきました。いずれ本格開発した際にも、周辺の環境を考えると緑を中心軸としたものになることが想定されます。そこで緑を中心とした企画を考えました。また、この場所は、まわりの表参道駅や外苑前駅、赤坂、六本木付近とちがい、人通りは少なく、都心にぽっかりと空いた無色のまちでもありました。ここに緑もあって賑わいを生む空間を作り、『地熱を上げる』ことができれば、まちにとってもとても良いことだと思いました」

企画は4年越しで進められた。「社内で3年ほどかけて、折に触れて提案しました。当時、競合他社のマンションのモデルルームとしてもよく利用されていましたので、わざわざ競合他社に貸すよりは自社で何かやったほうがよいのではないでしょうか、と言うと結構、説得力をもって聞いてもらえました。企画が通るまでは時間がかかりましたが、決まってからは1年程度で開業までもっていくことができました」

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