2018年5月号

オープンセミナーレポート

リノベのビジネス化で急成長 人を不幸にしない建物を

山下 智弘(リノべる 代表取締役)

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古い建物は壊して建て替える「スクラップ・アンド・ビルド」が中心となってきた日本の建設業界で、古い建物を活かし、再び刷新するリノベーションが近年、注目されている。中古物件の刷新によって「かしこく素敵な暮らし」が可能になるという。

山下 智弘(リノべる 代表取締役)

住宅市場の抱える課題

国内の住宅購入では、新築物件の購入が全体の約8割を占めるが、欧米では逆に約8割が中古物件で、新築は2割程度に過ぎない。国内で新築物件の比率が高い背景には、戦争で多くの家が失われ、戦後は大量の住宅供給が必要になったことがある。

しかし、人口減少時代を迎えた現在の日本では空き家が増加傾向にある。空き家や中古物件の活用が重要課題となる中で、注目を集めているのが「リノベーション」だ。

代表取締役の山下智弘氏は2010年にリノべるを設立した。その主要サービスである中古住宅のワンストップリノベーションサービス「リノベる。」は現在、請負型リノベーション施工実績で国内トップクラスを誇る。「リノベる。」のサービスは、オンラインとオフラインを結びつけた「O2Oプラットフォームサービス」の形態で展開されている。「住宅購入では、消費者は失敗することがないよう、オンラインだけでなくリアルに説明を聞きたいと考えます。そこで『リノべる。』では、オンラインで顧客を集めつつ、全国31箇所にショールームを伴う店舗があります」と語る。

「リノベーションという言葉は約10年前から国内でも知られるようになりましたが、リフォームとの違いはあまり理解されていません」と、山下氏は言う。

リノベーションは従来の大量建築、大量売却ではなく、使えるものは残しつつ、顧客のライフスタイルに合わせて一つ一つの要望を住宅に組み込む。従って、デザイナー、工事事業者、設計者、金融機関など、居住者が関わる関係者が多岐にわたる。

従来であれば、個人で行うにはとても煩雑な手続きが必要であった。まずは、不動産会社へ行き、築年数の古い物件を探し、物件を購入する前に工務店を探し再び現地調査へ。最後に銀行のローン審査のハードルが待ち受ける。

そこで、「リノべる。」では、顧客のライフスタイルに合わせた空間をつくれるよう、設計からローンまで、リノベーションの多岐にわたるサービスを顧客に対して一気通貫で提供する。このことが「リノべる。」の強みの一つでもある。

「リノべる。」のサービス概要

世界では非常識な
日本の住宅市場の当たり前

欧米では古い建物が大切にされているが、日本の建設業界では古い建物を壊して建て替える「スクラップ・アンド・ビルド」が中心となってきた。

「古い建物の建て替えでは、新しくなって幸せになる人もいますが、退去を強いられ、不幸になる人もいます。両者を幸せにするには、古い建物を活かしつつ、リノベーションしていくのが良いと考えています」

山下氏が設立したリノべるの企業理念は、「日本の暮らしを、世界で一番、かしこく素敵に。」というものだ。かつての人口が増えていた日本では、住まいの大量生産が重要で、「誰もが嫌がらない家」を造ることが求められていた。

このような中で、住宅が「素敵であること」は後回しになっていたが、リノベーションはそれを可能にする。また中古マンションを活用することで、新築より低価格で「かしこく」それを実現できる。

「リノべる。」が扱う物件で中心となるのは、築30~40年程度のマンションだ。コンクリートの躯体は築30~40年程度でも十分使えるものが多いことから、リノベーションでは一旦、部屋をコンクリートだけの状態に戻し、配線や配管などは新しいものに交換する。さらに部屋の間取りを、顧客の希望や時代の変化に沿ったものに変えていく。

マンション価格は一般的に、築20~30年後には約半値となる。これは、その間に建物の価値がなくなり、主に土地価格の評価だけになるためだ。

「築30年後以降はマンションの価格は安定します。したがって、私たちは築30年以上のマンションを購入してリノベーションすれば、『かしこく』と『素敵』のバランスが取れると考えています」

リノベーションによって、新しい可能性も見えてきた。住宅にとどまらず、多様な建築物を一棟リノベーションで再生する取り組みだ。提携先である東急電鉄が保有する物件の再生も手がけており、最近では、築21年の建物をリノベーションして生まれた徳島県の体験型施設「Turn Table」(渋谷区神泉町)が注目を集めている。

人を不幸にしない建物を

山下氏は最後に「リノべる。」のきっかけとなるゼネコン会社に勤務していた時代の苦い思い出を語る。

「用地を仕入れ、デベロッパーに売る仕事をしていたとき、1人のおばあさんにマンションから立ち退いてもらいました。その2年後に新しいマンションが完成し、おばあさんに笑顔で完成報告をしたら、『おじいさんとの思い出の部屋を壊された。私の人生はどこにあるのか』と大泣きされました」

山下氏は、人を幸せにするはずの建物を造っていたはずが、人を不幸にする建物を造っていたのではないかと、自らの仕事に疑問を抱いたという。

「衣」「食」は文句無しに豊かになって日本において、「住」も本当の意味で豊かになるべきではないかと山下氏は続ける。

物件をリノベーションすることで、住む人々の理想の暮らしを実現し、夢を叶えたいと締めくくった。

 

山下 智弘(やました・ともひろ)
リノべる 代表取締役
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