再浮上する「湯治」市場 若者客多く、制度整備も追い風に

日本全国で、「湯治」を地域活性化に役立てようという動きが広がっている。美容や健康への人々の関心が高まり、温泉に長期滞在して療養する湯治客は増加中。温泉利用型健康増進施設の要件緩和やヘルスツーリズム認証制度の開始も追い風となる。

温泉に長期滞在して療養する湯治客を取り込もうと、各地の温泉郷が知恵を絞る

豊富町「ミライノトウジ」

日本最北端に位置する温泉郷のひとつ、北海道豊富町の豊富温泉。北海道の玄関口である新千歳空港からは電車を乗り継いで6時間、稚内空港からは車で1時間かかる。便利とは言い難いエリアだが、近年では、年間延べ6,000人以上の湯治客(一般的に、温泉に長期間滞在し特定の疾病を療養する人)が訪れる人気温泉となっている。

豊富温泉は温泉水に石油成分を含む世界でも珍しい泉質で、大正時代には周辺で石油の試掘が行われていたほどだ。タール成分は皮膚病に効能が高いとされ、昭和初期からアトピー性皮膚炎や尋常性乾癬に悩む人々が湯治目的で訪れるようになった。

豊富町はこの資源を地域活性化に活かすため、2009年度以降、豊富温泉を「ミライノトウジ」という名称でブランディングするとともに、利用促進のための様々な施策を実施してきた。

代表的な取り組みが、湯治客の総合案内所兼憩いの場としてのコンシェルジュデスクの設置だ。アトピーでの湯治経験のあるスタッフが湯治生活のアドバイスを提供するほか、観光案内やイベント企画も手がけている。また、同じ悩みを持つ仲間同士の出会いの場にもなっている。

このほかにも、町営入浴施設への湯治客専用の浴槽設置、湯治療法をしながら通学できる小中高校生向けアトピー留学制度の開始、低価格の宿泊施設の開設など、多面的に施策を実施。これらが功を奏して、湯治客の長期滞在による経済効果が生まれ、移住者の増加にも繋がっている。

「ミライノトウジ」の取り組みは、2018年3月に行われた「第10回ヘルスツーリズム大賞」で大賞を受賞。町の担当者は「全国的にも珍しい泉質と、コンシェルジュデスクなどの体制の両面を評価して頂けた」と語る。

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