前駐米大使が明かす 大国指導者の心理分析と未来予測術

政府高官の華々しい活躍と共に語られる外交の現場。その実体は、どのような駆け引きと交渉に満ちているのだろうか。大局を捉える外交の本質から、事業構想への示唆を探った。

藤﨑 一郎(日米協会 会長、前駐米大使)

21世紀の現在も世界を牽引するアメリカ合衆国(以下、米国)の駐在大使とは、一体どのような職務なのか。一般に、大使の仕事は三つあると言われている。第一に駐在国の中において、日本の事情を説明すること。第二に、国政(米国の場合は大統領)選挙から経済まで幅広い駐在国の状況を日本に報告する。第三に、駐在国とのあらゆる交渉に参加・同席する。米国であれば、沖縄米軍基地の問題やTPPなどの問題について議論する。

これにくわえて、ワシントンの在米日本大使館では「国際情勢の把握」をも任務としている。それは、ワシントンが世界情勢の機密情報が集約するセンターという独特の場所だからだ。駐米大使に赴任する前に、藤﨑氏はワシントンで、大使館のナンバー3に相当する「政務担当公使」という、国際情勢把握の業務に4年間従事した。こうした経験から「米国に日本の考えを伝えたうえで、中国、中東、北朝鮮やロシアの動向を伺うことが、仕事の約半分を占めます。これが外交官の仕事の中でも、他国の大使館にはない、一部大きな公館、情報センターである国の特徴です」 と語る。

そして、米国の独特の位置から、北朝鮮、中国、韓国、そして米国へ一体的に目を向ける必要があると説く。

2016年11月17日、トランプ次期米国大統領(当時)と 安倍晋三首相との会談(内閣官房内閣広報室提供)

11月初旬のトランプ大統領アジア歴訪を受け、出演した討論番組では、「基本的には3つの点で想定内でした。1つはおもてなしです。2番目はお土産です。3番目は難しい問題の先送りです」と答え、議論の口火を切った。極東をめぐる問題は非常に難しく、そう容易には解決できない。各国の対応には不思議と「アジア的」な共通性があるが、米連邦政府の長であるトランプの面子を最重要視する対応であったと見る。

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