多様な地域経営の視点を/『コミュニティ3.0』今月注目の3冊
―ご執筆の動機をお聞かせください。
元々多摩ニュータウンの都市政策史研究から出発し、都市と地方の関係を検討してきました。最近の地方消滅論は社会の「共働き化」を考慮しておらず、それへの反論は地方独自の開発戦略に対する視点が弱い。そこで制度選択の視点から新しい地域政策論が必要と感じました。
―「コミュニティ3.0」という新しい 概念の意義は何ですか。
これまで、都市の集積に頼った地域づくりが行われてきました。しかし、現在求められているのは、人口減少期の「周縁」での協働の産物であるコモンズの管理組織としてのコミュニティで、その経営戦略を社会的に位置付けようと試みました。
―「面白さ」の強調が印象的です。
1990年代後半の「コミュニティ2.0」では、活動を面白がっている人は少数派でした。サラリーマンが、職場や家庭に次ぐ第三の場を求めていた傾向が強い。いまは自営業者やマルチワーカーが前例を打破し、自分たちのやりたいことをスモール・スタートアップで展開しています。逆説的ですが、「行き詰まっている地域ほど面白くやっている」のです。
―未来の都市構想への示唆をお聞かせください。
地域政策ではこれまで小規模事業者の協働が期待されてきましたが、実際は棲み分け協力の状況です。地域全体として潤うためには、そこをコモンズとして見て、共同収益を再投資し「個店の稼得から全体の稼得へ」と変えなければなりません。
合計特殊出生率を上げるには都市と地域の常識を見直す必要があります。コンパクトシティ論で理想とされたのは「歩ける都市」でしたが、未来の都市像はもっと多様であってよいと考えています。土地ごとに合った都市構成の良さがありますし、エネルギーの効率利用都市=暮らしやすい中心市街地でもありません。人口減少期には、これまで悪者扱いされてきたクルマとICTの駆使が多様な事業機会を生むには重要です。本書を一言で表せば「定住志向のコンパクトシティ」と共存する「広域で快適に動けるモビリティ社会」での基底としてコミュニティ3.0を構想しています。
コミュニティ3.0
−−自分・チーム・会社が変わる
持続的成長の技術と実践

- 中庭光彦(著)
- 本体2,500円+税
- 水曜社
- 2017年6月刊行
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