クラウドファンディングを利用したスポーツビジネスを探って

成田秀将は困っていた。今冬のアルペンスキーワールドカップに出場するための遠征費や現地での滞在費、コーチの費用、道具のメンテナンス費などの活動費......。合計約1,000万円は、すべて自己負担。もちろん、そんな資金は成田にはない。世界の舞台で滑りたい。その一心で、成田は新たなスポーツビジネスの手段を探っていった。
文・小島 沙穂 Playce

 

© Shinichiro TANAKA

中学3年生で日本代表に選出されて以来、インターハイ、全日本選手権とアルペンスキーの国内大会を次々と制し、世界に挑む21歳。それが、成田秀将である。2018年の平昌オリンピックに向け期待される選手のひとりだ。

2014-2015年シーズン、成田は各大陸別の王者を決定するコンチネンタルカップで優勝し、アジア地域の覇者となる。そして、国際大会でもっとも規模が大きいアルペンスキーのワールドカップへの出場権を得た。10月から翌年3月まで、日本を含めた数々の国を巡るワールドツアーだ。渡航費、コーチの帯同費、道具のメンテナンス費、各国での滞在費など、試合にかかる経費は約1,000万円。その出場のために、スキー連盟から選手に支払われる活動資金は、ゼロだった。

マイナースポーツにおいて、資金集めに苦労をすることは少なくない。掛け持ちで仕事をしたり、スポンサーを募ったり、自ら用意するにしても、限界がある。

これではワールドカップで勝つことはできない。そう悟った成田は、資金ゼロの状態から、支援を募る方法を探っていった。

人とのつながりが新たなビジネスを生む

これまでは、スキーの関連企業と契約して活動してきた。しかし、それだけではこれ以上の支援は望めない、そこに留まっていたら次のステップへ踏み出せないと考えた成田は、スキー業界の外の分野の企業にアプローチを仕掛けていく。

成田は毎年4月に子ども向けスキー教室を開催しており、そのご家族たちに支援していただくことが多いという。なかには企業の社長も多く、成田は彼らに個別にアポイントを取って、支援を依頼しに行く。

「企業訪問の機会をつくっていただいた時点で、ある程度応援してくれる意志をもっていると考えられます。それならば限られた時間で『応援してください』と頼むのではなく、相手にとって興味のある話題を選び、有意義な時間を過ごせるよう意識しています。50~60代の社長さんのなかには、1990年前後のスキーブームで実際にスキーを楽しんでいた方も多いです。僕に興味をもつ方々は、スキーがお好きな方ですから、世界大会で出会った人の話だとか、世界のスキープレイヤーのトレンドなど、スキーの話をすることが多いですね」

スキーのほかにも、あらかじめ相手企業の製品のことを調べたり、興味のある分野を探ったりして、相手の懐に入っていく。

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