「桐島」の脚本家が語る 「人のリアル」を描く創作術
口コミで評判を呼び、異例のロングランを記録した映画『桐島、部活やめるってよ』。多くの人が感情移入し、共感した物語は、どのように生み出されたのか。脚本家・喜安浩平氏が拠り所にしているのは、自身の身体感覚だ。
2012年に公開された映画『桐島、部活やめるってよ』で、日本アカデミー賞優秀脚本賞を受賞した喜安浩平氏。その後も、ももいろクローバーZ主演の『幕が上がる』、6月27日より公開中の『ストレイヤーズ・クロニクル』など、話題作の脚本を担当している。
『桐島』を観た人の多くが、それを「自分の物語」と感じ、口々に感想を語り合った。今、マーケティングでもキーワードとなる「口コミ」や「共感」。しかし、喜安氏は、観客を想定し、「共感のしやすさ」を考えて、脚本を書いているわけではない。
物語は細部の積み重ね
演劇出身で、脚本だけでなく俳優、声優、演出家と多彩な顔を持つ喜安氏は、「シナリオを勉強したことがない。我流です」という。
「一般的には、プロット(物語の設計図、あらすじ)が先にあって、そこから個々のシーンを描くらしいのですが、僕はプロットを書けません。『桐島』や『幕が上がる』も、プロットはありませんでした。最初から『ここで盛り上がる』というのを決めてしまうと、そこに至るまでのセリフが面白くなくなる。正直、その瞬間、その瞬間の面白みのことしか考えていない。細部の積み重ねが、結果的に物語と呼ばれるものになるだけです」
喜安氏の筆致は、魅力的な「細部」を描き出す。何気ない会話に潜む、心の揺らぎをすくい取る。『桐島』や『幕が上がる』は、10代を描いた青春群像劇だ。40歳の喜安氏が描く若者たちのセリフには、独特のリアリティがある。しかし、喜安氏は、「本当の10代のリアルはわからないし、情報収集もしていない」と語る。
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