「シーズ型」特有の制約を打破 ユーグレナの人・物・金の融合
大学発ベンチャーの活性化は、政府の成長戦略のひとつであるが、「大学発」はシーズ型のため、多くの制約を受ける。その環境下で、若手経営陣がネットワークを築き、成長を続けるユーグレナ社を紹介する。
ユーグレナ社は、ユーグレナ(和名ミドリムシ)等の微細藻類の研究開発、生産を主たる事業として展開するベンチャー企業である。経済産業省の第1回日本ベンチャー大賞(2015年1月)において、事業の新規性や革新性、グローバル市場への進出や社会的な課題の解決を目指すビジョンなどが高く評価され、内閣総理大臣賞(日本ベンチャー大賞)を受賞した。事業の新規性や革新性という点からすれば、同社は2005年12月に世界で初めて微細藻類ユーグレナの屋外での商用大量培養技術の確立に成功したバイオベンチャーである。
また、グローバル市場への進出や社会的な課題の解決を目指すビジョンという点からすれば、同社の代表である出雲充の著書のタイトル『僕はミドリムシで世界を救うことに決めました。』にもあるように、飢餓に苦しんでいる貧困者の食料問題の解決に向けて、バングラデシュでの活動を積極的に展開している。
同社は2005年8月9日に設立された。東京大学の研究シーズを基にしているという点からすれば、大学発バイオベンチャーと言える。大学発バイオベンチャーは、一般的には次の2つの特徴を有する。第1は、バイオベンチャーの特徴として長期間にわたる多額の研究開発投資が必要であり、ハイリスクの事業に耐えうる資金(リスクキャピタル)の安定的な調達が不可欠である。
つまり、先月号で述べた「人・物・金」の3つの要素の関連性からすれば、バイオという事業が持つビジネスモデル(物)の本質的特徴から、資金調達(金)の問題にも大きく影響を与えることになる。第2は、大学の研究者のシーズを基にしている「大学発」であることから、経営チームの組成という人の問題においても、一般的なベンチャー企業と比べて多くの制約がある。
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