2015年1月号
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パイオニアの突破力

二流に聞く、一流のパフォーマンスのつくり方

蛯名 健一 (演出家、振付家、パフォーマー)

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2013年秋、アメリカの人気オーディション番組「アメリカズ・ゴット・タレント」で優勝を飾った。日本人では初めての功績だった。この日から、蛯名健一は街を歩けば声を掛けられる、アメリカでもっとも有名な日本人のひとりになった。しかし彼は、自身のダンスの実力を「さほどではない」と評価する。“二流”の彼がつむぎ出すステージの魅力は、いったいどこにあるのだろうか。

決勝戦まで行かなくともいい。この大会でのパフォーマンスが、今後のプロモーションになればいい。そう考えて2013年、蛯名健一はアメリカの人気オーディション番組「アメリカズ・ゴット・タレント(AGT)」に出場した。決勝当日、彼がステージに立つも客席は冷ややかだった。しかし、十八番の「首落ち」や「エビケン・ゾンビ」が決まると、会場にいる観客もテレビで中継を見ていた人々も、みな彼のパフォーマンスに沸き立った。

2012年までのAGT優勝者は歌手が多い。いわゆるダンサーやパフォーミングアーティストは、初戦で好成績を残していてもステージが進むにつれ、途中で他のアーティストに負けてしまっていた。その理由を蛯名は、審査員がダンスを見慣れてきて得点になりづらい点にあると分析する。そのため、蛯名は趣を変え、観客を飽きさせないよう演出を重視したストーリー仕立ての演目を組み立てていった。

技術の組み合わせで表現が広がる

AGTの優勝は、演技の多様性が評価されたのだと蛯名は分析する。蛯名は自身のダンスを“二流”であると評する。パフォーマンスの技術をそれぞれ10段階に分けられるとしたら、彼のダンスはレベル7~8程度。一般の人が見れば上手く見えるが、技術を極めたダンサーや目の肥えた観客は物足りなさを感じるだろうと彼は言う。

20代の頃、アメリカでダンスの経験を積んでいた蛯名は、レベル10のダンスを目指して練習に励んでいた。しかし、身長160cmとダンサーとしては小柄な彼は、バックダンサーのオーディションに応募しても不採用が続く。技術で評価を受けても、同程度のスキルをもつダンサーと比較されると、体格に恵まれている方が採用される。ニューヨークには夢を抱いて世界中から集まってきたダンサーも多く、その中で勝ち抜いていくのは困難だった。それならば、彼らと異なる路線で攻めていけばいい。そう蛯名は考えた。ダンサーの多くは、自分のダンスをより高みへ、レベル10に近づこうと練習を重ねている。同じことをしても勝てないと、模索するうちにたどり着いたのが、現在の「複数のスキルを組み合わせる」スタイル。ダンスを魅せるのではなく、エンターテインメントの一部として、ダンスを用いるスタイルだ。さまざまなジャンルの技をいくつも覚える。そして、それらを組み合わせて“一流”のショーをつくりあげるのが蛯名流だ。

「クリエイティブというよりも、すでにもっているスキルや技術を応用し、よりおもしろいものへと発展させていきます。『コーディネート』という表現が近いかもしれませんね」

ひとつのものをレベル10に極めるには、多くの経験値が必要になるうえ、レベルが上がれば上がるほど難しくなる。習得に時間がかかるなら、他のパフォーマンスをいくつも覚えた方がいい、と考えたのだ。

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