日本の伝統を次代につなぐ

学生時代に伝統産業の職人たちに出会い、「本物が持つ魅力」と「現場の窮状」を肌で感じた矢島社長は、ビジネスを展開することで、自身の想いを実現させようとしている。

和える。不思議な社名である。一見、何のことかと思ってしまうが、妙な引っ掛かりを覚えて、記憶に残る。社長の矢島里佳氏は、社名の由来をこう説明する。

「和えるは、混ぜるとは微妙に違って、元の素材の良さを活かしたまま合わせるという日本独特の言葉。昔ながらの伝統技術を現代的な感覚で提供していきたい」

和えるは、ベビー・キッズ向けに、本藍染の産着やタオル、草木染のブランケット、山中漆器の器、漆塗りのお箸などの商品を販売する。それらは全国の職人たちの協力でつくられたものだ。商品の良さが認められ、伊勢丹で常設販売されるなど、順調に販路を拡大している。矢島社長自身も大きな注目を集め、数多くの講演やメディアへの登場をこなし、経済産業省のクールジャパン推進戦略事業ビジネスプロデューサーも務めた。

自分の感覚を信じて起業

職人との細かな打ち合わせを繰り返し、商品は形になっていく

矢島社長は高校時代、テレビ東京の「TVチャンピオン・礼儀作法選手権」で優勝した経験を持つ。もともと部活動で茶道をたしなみ、日本の伝統に興味を持っていた。現在に至るきっかけの一つは、大学時代、JTBの会報誌で全国各地の職人たちを紹介する連載記事を担当したことだ。

「地方を回りたいと思ったけど、奨学金をもらって大学に通っている立場でお金がない。バイトでお金を貯めるのは時間がもったいないから、企画書をつくって、自分で売り込みました」

取材をとおして伝統産業の魅力を再確認し、ベビー・キッズ向けに商品を展開することを思い付く。

「自分があったらいいと思えるなら、同じく欲しい人たちいるだろうと考えました」

矢島社長は自身の仮説を検証するために、学生向けのビジネスプランコンテストに応募。その結果、東京都主催の学生起業家選手権で見事に優勝した。そして、自ら起業することを決意する。しかし、周囲には起業に反対する声も多かった。

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