コア事業を起点に展開するバリュークリエーションの成長戦略 

人口減少と高齢化が進むなか、空き家問題は全国の自治体に共通する社会課題となっている。バリュークリエーション株式会社は、デジタルマーケティングで培った知見を活かし、解体の市場において新たな展開を進める。空き家解体を起点に、地銀や事業会社との共創も加速させながら、次世代へのバトン渡しを見据える代表取締役社長・新谷晃人氏にその原点と未来像を聞いた。 

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新谷 晃人(バリュークリエーション株式会社 代表取締役社長)

新価値創出の起点となるデジタルマーケティング 

バリュークリエーション株式会社は、デジタルマーケティングと不動産DXを軸に事業を展開してきた。マーケティングDX事業では、運用型広告を中心に、Web集客から効果分析、改善提案までを一貫して支援。デジタル化が遅れる業界を中心に、事業成長を後押ししてきた。代表取締役社長・新谷 晃人 氏は2008年の設立以来、インターネット広告の可能性に着目し、同社のコアとなるデジタルマーケティングの知見を積み重ねてきた。 

その強みが生かされたのが、不動産DX領域で展開する「解体の窓口」である。不動産業界の調査を進める中で、解体工事は空き家所有者にとって経験が少なく、価格の妥当性も判断しづらいという構造的課題が浮かび上がった。「不透明な市場は一見すると扱いづらい。しかし、構造を整理し可視化できれば、社会的価値と経済価値を同時に生み出せる」と新谷氏は語る。そこで同社は、解体工事のマッチングプラットフォームを立ち上げ、市場の透明性向上に挑んだ。「解体の窓口」では、空き家の所有者が物件情報を登録すると、全国の解体業者から見積もりが提示される。コンシェルジュも仲介し条件整理や業者選定を支援する。これにより空き家の所有者は提案を比較できることになる。 

このプラットフォームを実現可能にする同社の競争力の源泉は、デジタルマーケティングで培った集客力にある。2023年には東証グロース市場に上場し、登録解体業者は2400社を超えた。「デジタルマーケティングはすべての事業の根幹です。ここが強ければ、隣の領域にも踏み出すこともできます」と新谷社長は語る。デジタルの力を起点に、不動産領域で新たな価値創出を進めている。 

「解体の窓口」運営メンバー
「解体の窓口」運営メンバー

解体を起点に広がる「扇型」の事業展開 

同社の事業は、空き家解体工事の領域のみにとどまらない。「空き家の解体後にも、建て替え、土地の売買、駐車場にするなど、様々なニーズがあります」。解体後に建替えを希望する顧客は37%、土地売買は24〜26%、駐車場は9%に上るという。一つの顧客接点から、複数のビジネスチャンスが生まれる。 

新規事業として準備を進める「墓じまいの窓口」も、既存事業と顧客接点を起点とした新サービスであり、空き家所有者との会話が起点となっている。「生活者の困りごとは、ひとつの課題で完結することはありません」と新谷氏は語る。「だからこそ、点ではなく線で支える仕組みが必要なのです」。この考え方は、単なる事業拡張ではなく、社会課題を立体的に捉える視点にも基づいている。 

パートナー企業・金融機関との共創で課題解決に挑む 

バリュークリエーションは、空き家問題を軸に金融機関や事業会社との連携を加速させている。同社が運営する「解体の窓口」には、解体にとどまらず、建替え、土地売買、駐車場経営など多様なニーズが寄せられる。しかし、それらすべてを一社で担うことは難しい。そこで同社は、各分野に強みを持つパートナーと連携し、顧客ニーズに応える体制づくりを進めてきた。 

その象徴が、タスキホールディングスとの連携だ。空き家・古家の解体を起点に、土地再流通や不動産売却までを視野に入れ、分断されがちな不動産プロセスを再設計。双方のプラットフォームとノウハウを掛け合わせることで、不動産のデジタル化と流通スピードの加速を目指す。 

一方で、現場の課題にも向き合う。メディロム子会社のMEDIROM MOTHER Labsとの連携では、遠隔体調管理システム「REMONY」を解体業者向けに展開。過酷な作業環境における作業員の体調を可視化し、熱中症や事故の予防を通じて、安全衛生管理の高度化と業界の持続的成長を支えている。 

さらに金融機関との連携も広がる。商工組合中央金庫との協業では、全国ネットワークを活用し、取引先に解体費用の削減ソリューションを提供する。金融機関の顧客支援の一助を担っている。このような、バリュークリエーションの空き家という社会課題に正面から向き合う姿勢が連携と新価値創出の好循環を生み出している。 

空き家画像イメージ

次世代へ価値をつなぐ経営者の原点 

「次の世代に何を残すのか」。新谷氏が事業を構想する際、常に起点としている問いである。「これまで先輩たちが築いてくれた社会や仕組みを、ただ享受するだけではいけない。今の30代、40代が責任を持って、次の日本を形づくっていくべきだと思っています」と語る。その視線は、自社の成長にとどまらず、社会全体の持続性に向けられている。こうした考え方の根底には、祖父から受け継いだ商いの原点がある。「祖父から教えられたのは、約束を守ること、小さな積み重ねを大切にすることでした。それが結果として信頼につながると思っています」。地域に根差した商いの中で培われた価値観は、現在の経営判断にも色濃く反映されている。 

同社が掲げる「時価総額1兆円」という目標も、その延長線上にある。「規模を大きくすること自体が目的ではありません。企業価値を高めることで、社会に還元できる価値を大きくしたい」。成長はあくまで手段であり、次世代に残す仕組みや選択肢を広げるための通過点だと位置づける。解体という現場起点の事業から始まった同社の挑戦は、空き家問題という社会課題と向き合いながら、地域、金融機関、パートナー企業を巻き込む構想へと発展してきた。個別課題の解決にとどまらず、構造そのものを変えていく。その歩みは、日本が直面する課題に対する一つの現実的な解答として、確かな存在感を示しつつある。 

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