企業版ふるさと納税はじまる 地方公共団体と企業連携の可能性

今年度(2016年度)から、企業版ふるさと納税が始まった。同制度は、地方公共団体が行う地方創生プロジェクトに対し企業が寄附した場合、税の軽減効果が従来の2倍になるもの。岐阜県と各務原市が取り組む事例を紹介しながら、その狙いや期待される効果を解説する。
取材協力:岐阜県、各務原市

 

岐阜県と各務原市が企業版ふるさと納税で取り組むのは、航空宇宙産業を担う人材育成事業だ。事業期間は2016年から2019年までの4年間となる。

岐阜県の2014年度製造品出荷額等の合計は5兆1012億円。そのなかで輸送用機械が8979億円と最も高い。輸送用機械の大半は自動車関係の製造品だが、2571億円は航空宇宙産業の製造品だ。これは国内の航空宇宙産業製造品の13.8%にあたり、全国でも3位に入るボリュームだという。

産業育成に成功するも人材確保に課題

しかし課題もある。それは技術者・技能者の育成と確保だ。岐阜県航空宇宙産業課・郷泰彦氏は次のように話す。

岐阜県 商工労働部 航空宇宙産業課 施設整備企画監 郷 泰彦

「航空宇宙産業は自動車産業ほど身近ではないため、県の航空宇宙産業が全国でも上位に入ることを、地元の人間でさえ、ほとんど知りません。このことは地元企業の人材確保にも影響しています。2015年度県内工業高校の就職実績で言うと、地元の航空宇宙産業関連の求人数に対する内定者数は44.4%にとどまりました。これは非常にもったいないことです」。

現在、県は幼年期から小中学生や高校生、そして就業者に至るまで、切れ目なく人材育成・確保事業を行う体制整備に取り組んでいる。「特に、次世代を担う子どもたちに、航空宇宙産業の魅力を知ってもらえるような事業を展開しようと、企業版ふるさと納税を活用しました」(郷氏)。

「各務原市の課題も、人材育成と考えています」と話すのは、各務原市航空宇宙科学博物館リニューアル推進室長・平野昌彦氏。「航空宇宙産業は各務原市の主要な産業です。その就業者が将来不足することは、当市の経済基盤を揺るがす、まさに死活問題です」。

各務原市 産業活力部航空宇宙科学博物館リニューアル推進室長 平野 昌彦

図1 企業版ふるさと納税の概要

企業版ふるさと納税は、地方公共団体が行う地方創生事業を応援する税制。企業が活用しやすいように寄附の下限を10万円に設定しており、寄附をすると現行の2倍の税が軽減される。この制度によって、創業地等の縁のある地方公共団体の地方創生事業や、自社に関する分野の地方創生事業等について、寄附という形で貢献するといった効果が期待される。また、地方公共団体が自らの地方創生の取組を企業にアピールすることによる地方公共団体間競争の促進も見込んでいる。

博物館リニューアルとソフト面の充実に活用

県と各務原市が子どもたちに航空宇宙産業の魅力を伝える舞台として選んだのが、「かかみがはら航空宇宙科学博物館」だ。1996年に開館した同博物館は、今年で20周年。開館当初、年間約49万人だった来館者は、最近では13万人弱に減少した。

各務原市は、「博物館を核とした航空宇宙産業都市魅力向上事業」として、県の支援と、企業版ふるさと納税を活用して、博物館のリニューアルに取り組んでおり、リニューアルオープン後は県と市が共同で運営していく。

「何度でも訪れたくなるような魅力ある博物館にするには、ハードだけでなくソフトの充実が必要で、それにはボランティアの力が重要になります」(平野氏)。博物館には、航空自衛隊や各務原市内にある航空宇宙関連企業のOBなどがボランティアとして活躍しており、そういった方々にガイドとして展示物のストーリーを語ってもらうことで、航空宇宙産業の魅力を子どもたちに伝えている。

「人材に対するニーズは長期に渡ります。博物館で興味を持った子どもが、成長して航空宇宙関連の仕事に就く。そして定年まで働いた後には、ボランティアとして博物館に関わっていただき、次の世代を育てる。博物館を核にそうした循環を作る。そういう夢を描きながら取り組んでいます」(郷氏)。

かかみがはら航空宇宙科学博物館のリニューアルイメージ:実機展示場の風景

教育プログラム:飛行機操縦シミュレーターで飛行のしくみを体験する様子

効果は資金面に留まらない

一方、県の「航空宇宙産業を支えるまち・ひと・しごと創生計画」は、JAXAや県内企業、教育機関との連携を図り、ものづくり体験教室や人材育成の新プログラムを開発・実施する人材育成事業。企業版ふるさと納税の目標金額は4年間で800万円を設定しているが、「その効果は資金面だけではない」と郷氏。「企業版ふるさと納税は、かかみがはら航空宇宙科学博物館の存在を知ってもらい、そこで教育プログラムに熱心に取り組んでいることを全国の企業にPRするいい機会になるはずです。企業から人材支援を得るきっかけにもなるのではないかと思っています」。

平野氏も企業版ふるさと納税を活用したことによるPR効果を実感しているという。「博物館の存在を知ってもらうことは、我々にとって非常に重要で難しい仕事でしたが、企業版ふるさと納税に取り組むことによって新聞や雑誌の取材が増えて、博物館は全国区になりました」。

このように、企業版ふるさと納税は、資金面以外にも様々なメリットがある。今後は、地方公共団体と企業が連携することにより、各地の地方創生プロジェクトが加速していくことが望まれる。

図2 人材育成による航空宇宙産業支援策

航空宇宙産業にかかる優れた人材・担い手の育成・確保に向けて、「小中学生」→「高校生」→「就業者」へ切れ目のない人材育成を展開

 

お問い合わせ

  1. 内閣府地方創生推進事務局
  2. 千代田区永田町1-11-39 永田町合同庁舎6階
  3. TEL:03-5510-2475
  4. Mail:e.chiiki@cao.go.jp

この記事に関するお問い合わせは以下のフォームより送信してください。

全文を読むには有料プランへのご登録が必要です。

  • 記事本文残り0%

月刊「事業構想」購読会員登録で
全文読むことができます。
今すぐ無料トライアルに登録しよう!

初月無料トライアル!

  • 雑誌「月刊事業構想」を送料無料でお届け
  • バックナンバー含む、オリジナル記事15,000本以上が読み放題
  • フォーラム・セミナーなどイベントに優先的にご招待

※無料体験後は自動的に有料購読に移行します。無料期間内に解約しても解約金は発生しません。