自動車アフターマーケットの改革 BtoBtoCの仕組みを構築

「街のカーウンセラー」事業を皮切りに、BtoBtoCのビジネスモデル構築に力を入れるブロードリーフ。今後の自動車アフターマーケットの可能性について、大山堅司社長とマーケターとして活躍し社外取締役も務める渡邊喜一郎氏が語った。

「街のカーウンセラー」は、自動車整備工場への集客を支援することを目的として、ブロードリーフが立ち上げたサービスブランド

─最初に、お二人の出会いのきっかけ、その時の印象などを教えてください。

大山 当社は自動車アフターマーケット事業者向けのITシステムの提供というBtoBマーケットを手がけてきました。

整備工場や修理工場が我々の顧客になるのですが、その先のC(コンシューマー)、つまり車を持っているカーオーナーへ訴求を図りたいと考え、そうしたマーケティングに強い方を社外取締役として迎えたいと、探していたんです。そうした中で、ディズニー伝説のマーケターと言われる渡邊さんの名前が挙がってきました。

大山堅司(おおやま・けんじ)ブロードリーフ 代表取締役社長

渡邊 私は1981年にオリエンタルランドに入社し、10年間、ディズニーランドのマーケティングを行ってきました。その後、日産自動車、NTT、米国ユニバーサル・スタジオ、トミーなどを経て、現在はソリューション事業やゲーム事業などを手がける複数の企業の経営に携わっています。

大山社長とは2年前に出会いました。もともと車は大好きですし、お話してすぐ「これは面白い」と思い、社外取締役をお引き受けしました。

渡邊喜一郎(わたなべ・きいちろう)ブロードリーフ 取締役

大山 最初にお会いした時、5分から10分ほど話して、物事の仕組みにこだわらず常に新しい発想を考えていらっしゃる方だと直感し、さらにお話しをしていくうえで、我々とは違う角度・視点で意見を言ってくれるだろうと、即決しました。私は常にスピード感を重視しています。何かを始める時もやめる時も即座に決める。渡邊さんは決断がとても早いので、そうした意味でも経営陣としてピッタリときました。

1台の車を長く乗る時代

─自動車関連業界、特にアフターマーケットの可能性をどう見ていますか。

大山 自動車関連の経済アナリストは主にメーカーを見ています。自動車の生産としては下がってきていますので、マーケットはシュリンクしているというのが、一般的な自動車業界の見方だと思います。

ところが、自動車保有台数は、シュリンクしておらず、自動車アフターマーケットの市場規模は拡大傾向にあります。自動車の整備工場数は毎年微増しています。つまり、メンテナンス需要は増えているのです。我々はそのマーケットにフォーカスして、事業をしています。「自動車」という大きな表現の影に隠れて目立たない分野、我々はそこで勝負しています。

当社は1台あたり3万点に及ぶ部品の情報を30年間分蓄積しています。これは、部品コードのデータベースとしてはNo.1で、業界標準となっています。自動車の補修が増えれば、当然、中古部品流通も増えます。中古部品の流通において、我々は日本一のマーケットプレイスを持っています。現在、約400億円の中古部品が私どもの電子マーケット上で売買されており、1日約1万点の部品が出荷されています。

渡邊 そして、車齢が伸びている。私がはじめて車を買った時代には、早くて3年、長くても5年で買い替えるのが普通でした。それが今は、買った車を長く乗る文化に変わってきているのだと思います。

大山 これまで国産車は、7年で減価償却0円が当たり前でした。ところが今は、10年でも12年でもオークションでバンバン売れる。きちんと整備されていればいるほど、高く売れるんです。日本は道路事情がいいので、本当にきちんと整備していれば、20年でも乗ることができます。

渡邊 乗れば乗るほど、車はエンジンも含めドライバーに馴染んできます。買い替えるより、きちんと整備した方が安くて、愛着のある車に長く乗ることができるんです。

大山 カーオーナーが車をすぐに買い替えないようになって、アフターマーケットの意味が出てきたと言えます。車は、7年、9年、11年と車検の回数が増えてくると、整備士の腕次第で、走りも燃費もエンジンも違うのです。いい整備工場で整備すれば、その後のカーライフが随分と変わってきます。そうした部分を、我々がITを使って、手助けしていこうと思っています。

市場を透明化する

─具体的にはどんな取り組みをされてきたのでしょう。

大山 自動車整備の見積りは、誰が見てもサッパリ分からない。10年前にこの業界に入った時、「この見積もりでカーオーナーが納得しているって、すごい業界だな」と思いました。

整備会社にお任せ、説明も不十分。遅れているとも言えますし、カーオーナーの知識不足の上に成り立っている仕組みとも言えます。誰にでも分かるような簡単な見積もりや情報を提供し、市場を透明化したい。そんな思いで、コンシューマーであるカーオーナーに目を向けたサービスを始めました。

渡邊 衝突した車を整備工場に持っていくと、どこが故障していて、どの部品を変えて、工賃はいくらかということが即座に分かる。ブロードリーフでは、そうしたシステムを整備・修理工場に提供しています。どう直しているのかもすぐに分かり、明朗会計で非常に分かりやすく、安心感も生まれます。

BtoBをやるなら、BtoBtoCまで、見ていかなければいけません。

大山 渡邊さんに社外取締役として来ていただいたのは、人の心をわしづかみにするマーケティングのスペシャリストである渡邊さんに、ぜひ、カーオーナー目線で様々な判断をしていただきたいと思ったからです。

渡邊 整備・修理工場って、何もないのが当たり前。時間をつぶす手段もなければ、家族連れが修理を待つ場所もない。それが普通だという考え方を打破して、新たなサービスを作り出していかなくてはならない。顧客志向と口にはしますが、実際にはできていないことがほとんどです。ソフト面も含めたBtoCの戦略には、常に消費者のことを真に考えていくことが重要。

必ずリピーターを作るのが、私のマーケティングのやり方です。例えばバレンタインなら、チョコレートをただ渡すだけでなく、どんなシチュエーションでどう渡すか、演出も大切ですよね。その演出をもって、ワラをバラの花束に変えるのが、私のマーケティングの基本です。

「街のカーウンセラー」の看板のある整備・修理工場に行くと、必ずリピーターになる。そんな仕掛けを大山社長と一緒に作っていきたいと思っています。

「街のカーウンセラー」の仕組み

時代の変化に柔軟に対応

─今後、アフターマーケット業界はどのように変わっていくでしょうか。

大山 我々のお客さまには、高度経済成長時代に創業して大きくなった整備・修理工場が多くあります。事業が勝手に拡大していく時代から、今、競争・淘汰の時代に変わりました。さらに、地域社会に根付き、家族ぐるみでつきあっていた時代から、ネット社会になり地域社会とは疎遠な若者が増えてきました。これまでのような待ち受け商売では、成り立たなくなってきたのです。

我々はITをやっている会社ですので、マーケットが変わっているというシグナルを出しながら、そのマーケットに合う提案をしていくことで、業界全体を底上げしていく。待ち受けの業界を改革して、本当のサービス業に変えていくという取り組みをしたいと思っています。

渡邊 「ビッグデータなんて関係ない」と、顧客動向や管理が十分にできていない中小整備・修理工場はまだまだあると思います。ブロードリーフのシステムなら、車検証のQRコードを読み込むだけで、必要な情報が登録できる仕組みも構築されています。

アフターマーケットの世界も今後はパイの取り合いになっていくでしょう。そうした時に、設備がない、先端技術に対応できない、接客が悪い、ITリテラシーがないといったことが、淘汰される要素となります。

お客様へのサービスにメルマガを出すことが普通になっている時代に工場にはメールアドレスもホームページもないのでは、話になりません。お客様の変化に、業界も対応していく必要があるでしょう。

こうした話をすると、特に二世、三世の若い世代は真剣に聞き、考え、行動に移します。店舗の設計から手伝ってくれという若い経営者の方もいるくらいです。

大山 目線をカーオーナーに向け、そのニーズを満たすために必要なものは接客なのか、技術なのか、サービスなのか、ツールなのかを常に考える。そして、そのニーズを満足させるために必要な武器を我々の直接の顧客である整備・修理工場へ提供していくことが、我々の使命だと思っています。

渡邊 カーオーナーを喜ばせる目線もさることながら、我々の直接のお客さまである整備・修理工場の収益に貢献する仕組みもしっかりと構築していきます。サービスはタダではないですから。そこは、強化していくつもりです。

大山 これらの武器やサービスを取り入れながら、それぞれの工場の特色を出して、自分で事業を育てていく。そうすることで、特徴的な企業経営が見いだせます。どのように変化をつくるか、どのように発想していくか、多くの人から話を聞いて、実際に自分で考えて事業化していくことが大事です。それが、事業構想ではないかと考えています。

(左)ブロードリーフ 大山堅司社長、(右)渡邊喜一郎取締役

大山堅司(おおやま・けんじ)
ブロードリーフ 代表取締役社長

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