金沢から全国、世界進出を狙う革新ベンチャー

各種コンテストや助成事業の実施等で地域ぐるみでベンチャー育成に取り組む金沢では、地の利を活かした革新的な事業が続々誕生している。ベンチャーにとって金沢はどのような場所なのか。新進気鋭のベンチャー企業3社に金沢の魅力を聞いた。

ベンチャー企業を立ち上げるにあたり、重点を置くポイント、動機はそれぞれ違う。職場環境に惹かれて開業する例もあれば、豊富な人材を活用すべく起業するケースもあるだろう。

ゲームの制作環境重視 海外での売上が68%

グランゼーラが制作する異なるゲームの一画面。この仮想空間でユーザーが交流などを楽しむ(画像提供:グランゼーラ)

あえて大都市を離れ、金沢から世界へ向けたビジネスを展開しているのは、ゲーム開発ベンチャー企業のグランゼーラだ。

同社の主力事業は、家庭用ゲーム機「プレイステイション3(PS3)」や携帯ゲーム機「プレイステイション・ヴィータ」向けのゲームソフトの企画、開発、販売、そして、PS3上の仮想空間「プレイステイション・ホーム」にあるラウンジの制作・運営、ユーザーの分身であるアバターが身につける衣装やアイテムの販売だ。これらサービスは、日本、北米、欧州、アジアの37カ国に展開しており、売り上げ比率は、日本35%、欧州15%、北米50%と、海外が優位にたっている。

代表取締役の名倉剛氏は、金沢で起業する意味をこう語る。

「海外展開では市場規模が約7倍にまで広がるので、海外での売り上げは今以上に伸ばせると思っています。大阪出身の私が起業の場所として金沢を選んだのは、以前の勤務先が石川県にあり10年以上前から金沢に住んでいて土地勘があったことに加え、制作スタッフが気分転換しやすい地域環境であることや、地代が安いためゆったりとしたスペースを確保できることなど、ゲーム制作におけるメリットの高さを実感したからです。物流が発生するわけでもなく、インターネットを介して事業のやり取りを行えるゲームの開発・販売では、乱立するゲーム会社の中で埋もれてしまう可能性が高い大都市に籍を置く理由が見当たりません。自分たちが作った娯楽を、金沢にいながらにして世界に配信・提供できるのは大きな醍醐味です」。

金沢に産業の核を 創造学生や異業種と交流

グランゼーラの開発室。同社は石川県産業創出支援機構「革新的ベンチャービジネス プランコンテストいしかわ」にて「最優秀起業家賞」を受賞(画像提供:グランゼーラ)

常に海外を視野にいれた事業を展開する名倉氏は、「IT系企業が多い」という金沢の特性を活かし、「金沢デジタルエンターテインメント構想」を掲げる。

「金沢にはIT企業や大学が多いという特徴もあるのですが、IT企業が学生を金沢に惹きつけているかというと必ずしもそうではありません。金沢はITが強いというイメージを持つ人も多くないと思います。そこで考えたのが、金沢のIT産業の軸の一つに〝娯楽〟を据え、たくさんのデジタルエンターテインメント関連企業が集まる街にするという構想です。弊社を大きな会社にするというよりも、多くの地元企業とつながって事業ができるようにして、金沢全体で金沢産デジタルエンターテインメントを世界に発信するのが目標です」(名倉氏)。

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