三越伊勢丹 新宿本店のブランド力、新戦略で活かせず

セールの後倒しが不発で、期待の大阪店も不振。百貨店業界を牽引してきた三越伊勢丹が、新戦略で苦汁をなめている。どこに読み違えがあったのか。苦戦の要因を探る。

三越伊勢丹ホールディングス(HD)が運営する伊勢丹百貨店は、ファッション業界では依然として大きな存在であることに異論はない。

しかし、伊勢丹百貨店は新宿本店のみが突出した売上高・存在感を誇るものの、その他の店舗はJR西日本との合弁会社で運営するJR京都伊勢丹が年商600億円規模であることを除けばそれほどではない。アパレル業界人・マスコミ人が「伊勢丹」を読み間違えるのは、新宿本店の実力を「普遍的」と捉えるからではないか。

セールの後倒しに他の百貨店は追随せず

三越伊勢丹HDと、JR東日本が運営するファッションビル「ルミネ」が今夏、セールのスタート時期を2週間以上遅らせて7月12日、13日とした。ルミネが7月12日、伊勢丹が7月13日である。セール時期を遅らせることに対して、三越伊勢丹HDの大西洋社長は並々ならぬ意欲を持っており、すでに2011年12月末ごろの繊研新聞でその構想を披露していた。

もともと夏のセールは7月末や8月に開催されていた。それが徐々に早まり7月1日や6月末から開催されるようになった。ちなみに、04年ごろでも7月5日前後の開始だったことを記憶している。

冬も同様に1月末や2月上旬だったのが徐々に早まり、現在では1月2日に定着しているのである。しかし、6月末は梅雨真っ最中で「梅雨寒」という言葉もあるくらいで、それほど気温も高くない日が多い。気温が急上昇するのは、7月20日前後の梅雨明けからである。

そのため、「暑くなる前から夏セールを開始するのはおかしいのではないか」という声が業界には多く聞かれたのも事実である。また、百貨店もそこに納入するアパレルも収益を改善したいので、大西社長の「セール後倒し」構想に結実したといえる。

けれども結果は不発と評しても良いだろう。利益率は改善したと主張するアパレルもあるが、10月上旬でも夏物の在庫が大量に販売されていたことを見ると、とても「成功」とは言えないだろう。

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