ラスベガスの街に起業家集め自社のイノベーション力に変えるダウンタウン・プロジェクト構想
スティーブ・ジョブズやAmazonのジェフ・ベゾスなどに匹敵する当代随一のイノベーターと目されている一人が、アメリカ最大の靴ネットEC、ザッポスCEOのトニー・シェイだ。イノベーションの環境を生み出す才能に優れる彼は、また新たなプロジェクトに取り組み始めた。
「究極の顧客サービス」「ザッポスの奇跡」―モノを売るのではなく、サービスやおもてなし、感動を売るという、小売業の新たな流れを世界中に発信した企業がザッポスだ。
靴をメインに衣料、アクセサリーを中心としたECを行い、靴のオンライン小売ではアメリカ最大手である。1999年に創業、すでに最大手となっていた同社に脅威を感じたアマゾンが2009年11月には12億ドルの評価額で買収している。ただし、この買収は「ザッポスの勝利」との見方が強い。経営陣、事業のスタイル、社名、本社拠点など、企業のコアな部分をほぼそのまま継続する形での買収であったためだ。
ザッポス自身は、事業ドメインを「顧客サービス企業」としている。徹底的なカスタマーサービスを武器としているのだ。有名なのは、電話対応サービスにマニュアルがない点である。対応は完全に社員に一任され、時間は無制限。最長の対応時間は7時間とも8時間とも言われ、自社に在庫がない場合は他社であっても案内を行うなどの点も顧客の評価を高めている。サービスを通じて「ワォ!」と、感動を伴う驚きの体験を届けることを目的としていることから、こうした体制が生まれているのだ。
ザッポスの事情に詳しいダイナ・サーチインク代表の石塚しのぶ氏は、こうした点について、「90年代半ばにネット通販というビジネス・モデルが台頭した頃には、ネットというテクノロジーを用いていかに効率化を図るかに焦点が置かれていました。しかし、生活者が『ネット慣れ』し、ネット通販そのものの目新しさが薄れてくると、機能性や便宜性だけではなく、ショッピング体験における人間味や面白みが求められるようになってきました。
ザッポスはここに着眼し、『顧客を喜ばせるためならほとんど何をしてもよい』というほど大きな権限をオペレーターに与え、スクリプトもマニュアルも存在しない常識破れのコンタクトセンターを創造することで生活者の圧倒的な支持を集めることに成功しました」と指摘する。
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