【10月20日古川俊治デジタル大臣会見要旨】政府職員約18万人にAIエージェント環境、「源内基準」も公表

古川俊治デジタル大臣は2026年10月20日、記者会見を開いた。内閣府特命担当大臣(宇宙政策)として、H3ロケット10号機による火星衛星探査機「MMX」の打ち上げ成功を報告。デジタル大臣としては、政府職員向けのガバメントAI「源内」へのAIエージェント利用環境の導入や、Android端末へのマイナンバーカード機能の搭載開始などを発表した。

MMXが軌道へ、世界初のサンプルリターンに挑む

H3ロケット10号機は同日午前4時41分に種子島宇宙センターから打ち上げられ、MMXを軌道に投入した。古川大臣は、準備を進めてきた宇宙航空研究開発機構(JAXA)や関係企業、地元の関係者に敬意を表したうえで、成功を祝った。

MMXは火星の衛星フォボスを観測して試料を採取し、世界初となる火星圏からのサンプルリターンを目指す。大臣によると、火星の衛星の起源を明らかにすれば科学的な知見が深まるだけでなく、世界に先駆けて火星圏への往還技術を獲得することで、日本の宇宙産業の競争力強化にもつながるという。

大臣は、国の基幹ロケットであるH3ロケットが重要な探査機の打ち上げを成功させた点にも意義を見いだす。打ち上げ実績を着実に積み重ね、信頼性を高めるうえで大きな意味を持つからだ。今後、国内外の多様な打ち上げ利用に対してH3ロケットの活用が進み、宇宙産業の一層の発展につながることに期待を寄せた。

AX推進へ閣議決定の会議、月内に初会合

同日の閣議では、「AI・デジタル改革推進会議」の開催が決まった。急激な人口減少に対応しながら経済成長の実現と公共サービスの維持・強化を図るため、AIによるリスクの最小化を前提に、AI・デジタルの徹底活用による社会変革を進める会議だ。2023年に発足したデジタル行財政改革会議を発展的に改組したもので、事務はデジタル庁が担う。

議長は木原稔内閣官房長官と、AI・デジタル改革推進担当大臣を兼ねる古川大臣の2人。関係閣僚に加え、ソニーコンピュータサイエンス研究所の北野宏明代表取締役社長や東京大学大学院工学系研究科の松尾豊教授ら、AI・デジタル改革や規制改革などに詳しい有識者10人が構成員に名を連ねる。第1回会合は10月中の開催を目指し、関係府省庁と調整を進めている。

大臣は、この会議を軸にAIの利用を前提とした規制・制度や運用ルールを整え、AX(AI・トランスフォーメーション)の社会実装を政府横断で推進すると説明した。AXとDXの恩恵が社会の隅々まで行き渡る姿を目指すという。

Androidのマイナンバーカード提供開始

デジタル庁は同日、「Androidのマイナンバーカード」の提供を始めた。10月2日の会見で予告していた通りのリリースとなる。Android端末の「Google ウォレット」に入れて使う仕組みで、マイナアプリから手続きすれば、新たに「属性証明機能」を搭載できる。すでに電子証明書機能を使っている人も対象だ。

属性証明機能があれば、官民の対面サービスで、会員登録時の本人確認や酒・たばこ販売時の年齢確認、住民割引を受ける際の住所確認などを、スマートフォンで簡単かつ確実に済ませられる。確認する事業者の側では読み取りへの対応が必要になるものの、デジタル庁の「マイナンバーカード対面確認アプリ」を無償でダウンロードすれば、実物のカードやiPhoneに搭載したカードも含めて読み取れる。今後はオンラインで民間サービスを申し込む際の本人確認にも、利用場面を順次広げる予定だ。

実物のカードを持ち歩く必要がなくなり、暗証番号の入力に代えて生体認証も使えるようになるため、利便性は大きく向上する。大臣は、対応端末を持つ国民に搭載を呼びかけた。

対話で作業を任せる機能、工房は12月頃めど

デジタル庁は、政府職員約18万人に展開しているガバメントAI「源内」で、2種類のAIエージェント利用環境の提供を始める。政府の業務には、複数の工程を組み合わせて進める作業や、大量の資料をもとにした高度な調査・分析など、複雑で専門性の高いものが多い。こうした業務でAIを生かし、省力化と質の向上を両立させるには、特定の業務を自律的にこなすAIエージェントを使える環境を整える必要があるという。

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1つ目の「エージェントチャット」は、自然言語で対話しながら複数のタスクをAIに自律的に実行させられる機能で、同日から各府省庁などへ順次導入する。2つ目の「源内工房」は、より高度なエージェント機能として、専門知識がない職員でもAIアプリケーションを開発できる環境だ。こちらは2026年12月頃までの導入を目指している。デジタル庁の調査によれば、先進的なAIエージェント利用環境を約18万人規模で導入する政府機関の取り組みは、世界で初めてとなる。

AIエージェントは自ら判断と行動を繰り返すため、導入と利用にはこれまで以上にセキュリティの確保が求められる。デジタル庁は、政府職員がAIエージェントを安全かつ適切に使うためのルールとして「ガバメントAI 源内 ガバナンス・セキュリティ・セーフティに関する基準」(通称「源内基準」)を策定し、同日に公表した。利用者、管理者、開発者の立場ごとに、責務と遵守事項を明確にしている。

策定にあたっては、AIの安全性に関する評価手法や基準の検討・推進を担うAIセーフティ・インスティテュート(AISI)の協力を得た。大臣は、AIエージェントの導入を検討する地方自治体や民間事業者が、自らの組織のAIガバナンスを考える際にも広く参考になるとの見方を示した。

コンテンツ産業を一元的に支援する新法人を検討

コンテンツ戦略担当大臣としては、「一元的なコンテンツ産業支援法人の設立検討タスクフォース」を設置し、第1回会合を開くと発表した。日本成長戦略やコンテンツ分野の官民投資ロードマップを踏まえ、予算配分の最適化や予算執行の一元化をどこまで進められるかを見極めながら、新たな支援体制となる法人のあり方を検討する。

支援体制の構築は総理の指示によるものだ。効果的な政策の実行に向け、関係省庁と連携して新法人の具体化に取り組む。

クールジャパン機構とは「全く違うもの」

質疑応答では、源内のAIエージェント利用環境を2027年2月頃をめどに、自治体や民間事業者も利用できるオープンソースソフトウェアとして公開する意義を問われた。大臣は、源内はもともと政府が安全性を第一に考えてきた基盤であり、AIエージェントの導入でも安全面を重く見ていると説明した。AIエージェントを使えばリスクが高まる面もある。だからこそ、信頼できる環境で安全に使えるよう政府が率先して取り組み、その成果を社会に広げることに意義があると強調した。

株式会社海外需要開拓支援機構(クールジャパン機構)との役割分担については、所管する経済産業省で今後の総括に向けた整理が進んでいるとして、詳細は同省に委ねた。そのうえで、新法人は官民ファンドではなく支援に特化した体制だと説明。海賊版対策など、1社では取り組みにくい課題に一元的に対応するとともに、総務省、経済産業省、文部科学省に分かれていた支援を最適化し、効果を高める狙いがある。食なども扱ってきたクールジャパン機構と違い、新法人は対象をコンテンツに絞る。そのため「全く違うもの」と理解してほしいと述べた。

MMXの意義を問われた大臣は、火星圏からのサンプルリターンは世界初の挑戦であり、国際競争が厳しさを増すなかで日本の競争力を高める意味が大きいと答えた。宇宙は日常生活や産業、防衛・安全保障を支えるインフラであり、H3ロケットの実績と信頼性が今後の宇宙産業の発展にとって重要だという。H3ロケットの民間移管については、JAXAと民間事業者が今後検討するとの認識を示した。

企業へのサイバー攻撃をめぐっては、民間のサイバーセキュリティ機関が攻撃者によるAI利用の痕跡を確認したと発表したことを把握していると述べた。内閣官房国家サイバー統括室として、関係省庁などから情報を集めている。専門機関の分析結果も踏まえ、AIの悪用の可能性や具体的な利用状況、各事案の背景と相互の関連性を詳しく分析している段階だ。攻撃の手法や脆弱性に関する情報の集約・分析で得た結果を生かし、引き続き注意喚起を行う方針も示した。企業が具体的な対策を講じられるよう専門機関と連携して必要な情報を提供し、被害の未然防止と拡大防止に取り組む構えだ。

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