石倉洋子氏 経営者・行政・個人...、コロナ後に問われる存在意義

COVID-19によって大きく揺らぐ世界。経営戦略やビジネスモデルの根本的な見直しを迫られている企業も多い。経営学者の石倉洋子氏は、先の見通せない状況で新たな価値を見出すためには、ゼロベースで思考し、原点に立ち返ることが必要と説く。キーワードは、"What if?"だ。

コロナ以前の課題・疑念は
コロナ後も続く

第3次世界大戦につながるかもしれない、とも称されるCOVID-19。2019年末から2020年の少なくとも前半は、世界を未曾有の混乱に陥らせることとなったGlobal Pandemic。これほど、世界がつながっていることを実感させた事件はない。世界大戦などが起こるとそのあとで新しい世界秩序が生まれる、国際協調のきっかけになる、というこれまでの常識は、今回もあてはまるのか。コロナウイルスをはじめとする世界レベルの課題は、世界全体が協働して解決しなくてはならないという覚悟はみられるのか。各国、組織が以前の形のままで復活する、というある意味、楽観的な捉え方は、今回の新型コロナに通用するのか。

新型コロナの出現以前から、テクノロジーがこれまで以上に力を持ち、国家(中国など)やIT企業(いわゆるGAFAMやBAT)などが、個人データを武器にして、政治・経済・社会をコントロールするのではないか、という懸念が持たれてきた。また、米中のどちらが、貿易だけでなくテクノロジーの覇権も握るのか、危機的状況の中で、世界のリーダーは登場するのか、という疑問もあった。さらに、グローバル化と自国主義のせめぎ合い、民主主義・ポピュリズム・独裁制度など三つ巴となった争い、経済開発推進と社会課題の解決のトレードオフなど、分断や対立も盛んに議論されてきた。まだ感染が進行中の状態ではこうした問いに答えることは難しいし、仮に新型コロナが今年後半に収束したとしても、このような基本的な疑念が一掃されるのか、私は大きな疑問だと考えている。

ゼロベース思考の
キーワード・What if?

そこで、本稿では、企業経営者、政府関係者、実務担当者に対して、コロナの経験から"もしXXがなかったら(なくなったら)どうなるか? What if?"をそれぞれが自問自答することを提起したい。

休業要請があるなか、私の企業がなくなったら、どうなるのか。活動を維持している中央政府、地方自治体がなくなったらどうなるのか、都市と地方というこれまで考えられてきた枠組みがなくなったら、どんなことが起こるのか。個人は、自分がいなくなったら、誰がどんなかたちで影響を受けるのか、など原点に返った問題の捉え方である。

まだコロナの影響で休業中の企業は資金繰りに追われていて、それどころではないかもしれない。在宅勤務を奨励している一方、デジタル化が進んでいないので、役所に行く必要がある政府や地方自治体の職員も意外に多いかもしれない。データから見ると人の移動がかなり減少している都市に対して、あまり減少が見られないばかりか、逆に人が増えているのではないか、と思われる地方を今後どうするか、という疑問も生じてくる。在宅勤務になったら参加する会議やレポートが少なくなって、自分は会社に必要とされているのか、わからなくなった人もいるだろう。会社が休業してしまい、自分の仕事自体がなくなる可能性に不安を持つ人もいるだろう。

新型コロナで世界が大きく変わるときに、ゼロベースから自分の組織や枠組み、自身の存在意義を見直す、そのきっかけとなる質問が、"What if?"「もしなくなったらどうなるか」であり、この質問をすることによって、もう一度原点に戻って考えるのである。

企業経営者は、自社がなくなったことをシミュレーションしてみたら、顧客、仕入先、得意先、地域などステークホルダーへの影響がほとんどない、という結論に達するかもしれない。コロナへの対応で、それ以外の患者への初診からのオンライン診療が求められているなか、医療のデジタル化より規制を守ることを中心としてきた厚生労働省の本来の役割とは何か?新しいニーズに応えられないのであれば必要ないのでは、という疑問も生じている。

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