「ドローン×農」で、日本の農が世界に

ドローンをIoTデバイスとして活用し、収集したビッグデータをAI解析できる時代が到来した。「篤農家」の暗黙知となっていた「秘めた極みの技」に光をあて、新たな価値を付与することで、日本の農が世界に拓かれるだろう。

ドローンが農業に活用されることにより、「精密農業」が展開されるだろう

ドローン(無人航空機:UAV)が世界的に普及開始し、現在の市場規模44億ドルから2020年には110億ドル(約1.3兆円)(出典:フロスト&サリバン)に成長、軍用技術から商用技術への転用、ホビー用途から業務用途への広がり、周辺産業も取り込み今後20年は継続成長していく。そして、商用・業務用途として映像空撮とならび、精密農業がともに約25%とドローン産業の中心になると予測されている。

国内では昨年100億円程度だった市場規模が2020年には1,138億円(出典:インプレス総合研究所)、測量・検査・農業用途が各々25%となる見込みだ。人口減・労働力減少による今後の様々な社会課題の解決手段として、また新しい社会事業型ビジネスとしてドローンの活用が注目されている。例えば、土木・建築業界における3次元測量・各種インフラ点検保守、効率的な農作物の栽培を可能にする精密農業、新たな物流運搬など、ドローンによる新しいソリューションに大きな期待が寄せられている。

ドローンは、空の産業革命

ドローンが空の産業革命と呼ばれる所以は、1)2次元・平面視点をリアルタイムに3次元・空間視点をもたせること、2)物資を人が(乗り物を利用しながら)運搬することを無人で運搬すること、3)点のセンシングを空中から立体的にセンシングすることを「飛躍的に簡易かつ低コスト」で実現可能にしたからである(図1)。

図1 IoT × ドローンによる革命

 

「農業」にあてはめた場合、1)「見回り」してくれることによる日々の圃場観察や、「田畑空撮による観光資源」としての活用、2)農業機械を補完する空中からの播種・施肥・薬剤散布、3)スペクトルセンサーカメラによる植生リモートセンシングにおいて「飛躍的に簡易かつ低コスト」をドローンが実現することになる

田畑を見える化し、AI解析する

ドローンで植生リモートセンシングするとは、「田畑の生育状態を空中から画像センシング」し、その収集したデータを合成・各種植生指数(アルゴリズム)を用い数値化、田畑マップに重ね合わせ、「田畑を見える化」することである(図2)。

 

さらに、そのデ―タを蓄積し、AI解析することにより「田畑の見える化」から「田畑の生育段階ごとに“あるべき”状態を判断、そのときにどういう施しをすればいいか導く」ことが可能となる。重要なことは、その“あるべき状態”を言語化・形式化する方法である。データを正確に効率かつ大量に取得できるか、地上・地中の環境モニタリング、衛星リモートセンシングとも組み合わせ、ドローンがそのデータをいかに取得し、AI解析にかけられるかがポイントになる。

ドローンx農業リモートセンシングにおいて乗り越えなければならない技術課題はまだまだある。ドローンにおいてはバッテリーの持続時間とコントロール、GPS非依存型航行、電波干渉防御、可変荷重の安定航行、航行禁止エリアへの進入回避が挙げられる。また、農業リモートセンシングにおいては正確な植生解析するための太陽光のノイズキャンセル、作物ごとの生育過程にあわせた植生指数の判断の仕方、そもそも植生指数値が生育分析するうえでどう実際の栽培に反映・応用すればいいかの値の意味づけなどだ。

本稿では農業分野に絞って述べてきたが、高齢化・後継者問題において「技・匠の知見をデジタル化する」ことは緊急課題であり、ITを活用することは、すでに論を待たない。さらに、“多角的空中”視点から「アナログ→デジタル化し見える化」することにより、衰退産業とされてきた一次・二次産業が再生するチャンスとなると考えられる。

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