誤解だらけの商店街活性化 地域で「何かをやりたい人」の見つけ方

活性化に成功する商店街と、失敗する商店街の違いは、どこにあるのか。元気な商店街には「強い店」が存在し、「店が店を呼ぶ」流れがある。そのサイクルを生み出すには、出店の絶対数を増やすことが必要になる。

--現在の商店街をめぐる状況を、どう見ていますか

辻井 商店街のタイプを商圏の広さで分類すると、近隣型、地域型、広域型、超広域型に分かれます。近隣型とは、近所の住民をターゲットにした精肉店、鮮魚店、青果店などからなる商店街ですが、近隣型はほぼ消滅しており、人口密集地域である東京、大阪くらいでないと、このタイプで元気なところはありません。

本当に廃れきっている商店街も多く、それを再生するのは至難の業です。数少ない元気な商店街は、そのほとんどが大都市にある超広域型です。

ただ、地元の人たちが「廃れた」と思っていても、外から見ると、再生の可能性が感じられる商店街もあります。地元の人は、ものすごく元気だった最盛期の時代と比較して「廃れた」と言っている。でも、いろんな商店街を横断的に見る立場からすると、まだまだ集客があって新規の出店もある。そうした「生きている商店街」も残っています。

辻井 啓作(ともえ産業情報 取締役社長、千葉商科大学 非常勤講師)

「商店街」という言葉の曖昧さ

--辻井さんは、商店街の活性化を阻む要因として、「商店街という場所」と「商店街の組合」が混同されていることを指摘しています。

辻井 商店街を担当する行政などの現場では、「商店街」という言葉は、場所ではなく組織を指して使われることが多くなっています。商店街が補助金を受けるには、組合やそれに類する任意組織をつくる必要があり、国が支援の対象としているのは「商店街の組合」です。

長年、商店街の組合が主体となって、アーケードや駐車場の整備などが進められてきました。しかし近年は、組合による活性化事業の問題点も出てきています。

組合のメンバーは、親の代から商売をしている人が中心で、新規の創業者は入りづらい。また、新たな出店に対して、拒否反応を示す傾向もあります。組合員が多いほど、新規の出店者は誰かと同業になるわけですから、競合が増えるのを喜ばない。その結果、組合としての活性化と個別商店の利益に、ズレが生まれてしまいます。

さらに、商店街組合の中には、補助金のメニューに従って事業をするのが当然のような雰囲気のところもある。役員会で喧々諤々の議論をしている組合は、ほとんどないのが実状です。

そのため、やる気のある経営者は、組合からどんどん離れていきます。実際、商店街組織への加入率は低下しています。

--商店街組織が存在する中で、どのように変革を進めていけばいいのですか。

辻井 商店街組合の意識を変えていくのは、現実的には難しいでしょう。それよりも、商店街の活性化事業を、組合とは別の組織が担うようにすべきです。

私は、ある商店街の活性化事業に携わった際、最初は、組合に加入していない自分で店を開業した人たちに協力してもらうことから始めました。

自分で店を開業した人は、基本的にプラス志向で、面白いことがあったら寄って来るようなタイプです。自分一人の労働力は限られるとしても、「手伝えることがあったら言ってください」と、前向きに応えてくれます。

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