プロ競輪選手に聞く 一瞬のチャンスをつかむ思考法とトレーニングとは

競輪場には、選手と観客、それぞれの思惑がうずまいている。揺れ動く感情の波の中、競輪選手・平原康多は、スタートラインに立つ。単純なスピード勝負ではない、駆け引きが重要なレース。一瞬のチャンスをつかむ目を、平原はどのように養ってきたのだろうか。
文・小島 沙穂 Playce

 

同じく競輪の選手だった父に憧れて、自分もスポーツ選手になりたいと思ったのは、平原康多が中学生の頃。当時は軽い気持ちで乗りはじめた自転車だったが、その練習は肉体的にも精神的にも非常に大きな負担がかかる苦しいものだった。特に競輪選手となってからは、思うように成績が出せず苦しい思いをしたことも少なくない。

しかし、それから約20年、平原は自転車に乗り続けている。一戦一戦のレースを通じて、以前よりも自転車が好きになったと彼は言う。結果が出ない時でさえ、現実と向き合えるようになったからだ。何千、何万とペダルを回す中で、ゲームの駆け引きを身体にしみ込ませてきた。いつ前に飛び出し仕掛けるか、感覚を磨き続けている。2016年、プロになって14年。平原は今年もGIレースでの優勝、そして年末のKEIRINグランプリ出場を狙い、各地のレースを走る。

向上心が途切れた瞬間、強さへの歩みが止まる

自らをトップアスリートだと思ったことはない――。平原康多はそう強く言い放った。もちろん彼は、2002年のデビュー戦以降、これまで多くのレースを制してきた。平原の今年の級班は約2,300名の選手の内、9名にしか与えられないS級S班。超一流選手の証をもつにもかかわらず、自身はトップの選手ではないと言うのである。

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