待機児童、保育士不足... 保育業界に求められるイノベーション

国は少子化対策として待機児童解消などの「量」、保育環境整備などの「質」の両面で対策に力を注いでいる。保育士の資格も持つ聖和短期大学の千葉武夫学長に、保育現場の視点から見た保育の課題と求められる対応について聞いた。

―現在、保育現場が抱える問題はどこにあると感じていますか。

一つは待機児童の問題です。待機児童は全国で2万3千人程いますが、そのうちの72%が1、2歳児です。ここ15年来、女性の就業率の増加とともに、1、2歳児の保育所等利用率は上昇し、2015年は38.1%です。今後も女性の就業率がさらに増え、この数値は2017年度には48%と、半分の子どもが利用すると予測されています。このことから、さらに50万人分の保育の受け皿も拡大していくことが進められています。

もう一つは保育士の人材確保の問題です。この問題を考える場合、人材の採用、育成・定着、職場環境の改善、再雇用の4つの視点からとらえる必要があります。保育士の仕事はきつい、残業が多い、賃金が安いということばかりがメディアなどで強調され、保育の職業を目指す人によくないイメージで伝わってしまっているのは残念です。本当は貴重でやりがいのある仕事なのですが。

国は保育士の処遇改善に力を入れてきました。2012年度から比べると約9%、月額にして2万7千円賃金が上積みされています。このお金が国から都道府県から市町村、そして園へと送られています。しかし、保育士にこれらの金額が届いていないこともあると思います。

千葉 武夫(聖和短期大学 学長)

求められる保育士業務の効率化

―保育の現場ではどのように問題が捉えられているのでしょうか。

保育士の勤務時間について、日本保育協会の調査結果が実態を知る手がかりとなります。保育士の1日の平均勤務時間は約9時間40分。その内訳を見ると「保育の時間」が7時間とその大半を占めますが、「保育記録の作成」「保育教材の作成」「事務的な仕事」「掃除や清掃」等にそれぞれ約20~30分、「休憩時間」は30分ほど、有給休暇の消化日数も平均7.3日です。また、約半数が「家に持ち帰る仕事がある」と回答しており、その平均時間は約1時間半です。

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