FinTech、ビッグデータ、人工知能・・・ 最先端技術が観光を変える

FinTechやビッグデータ、人工知能などの最先端テクノロジーは、観光産業をどのように変えていくのだろうか。現代の観光客が抱えるニーズや課題を分析することで、有望なサービスやビジネスチャンスが見えてくる。

旅まえから旅あとまで、観光客の抱える不満やニーズは様々。ICT等テクノロジーを活用した課題解決型ビジネスが求められる(イメージ)

観光産業とイノベーション

1760年代からの第1次産業革命がもたらした鉄道や蒸気船。19世紀に入ると、鉄道網はイギリスだけでなく、ヨーロッパ大陸に張り巡らされ、ロンドン万博、パリ万博などが開催されて、ヨーロッパを中心に大衆ツーリズムが興った。こうした中、トーマス・クックは1843年、ホテルや交通機関の予約代行、団体列車の運行等を組み合わせたパッケージツアーを開発、1874年には現在と同様の仕組みのトラベラーズ・チェック(旅行小切手)を発行するなど、新たなビジネスモデルを投入し、大衆ツーリズムを後押しした。

鉄道網や航路の開発と拡充、ツアーやトラベラーズ・チェックの登場とその後の旅行産業の隆盛を振り返ると、旅行・観光産業にもテクノロジーが深く関係していることがうかがえる。特に移動手段と決済手段がツーリズムのイノベーションとなり得る。一世を風靡したトラベラーズ・チェックは、当時の「フィンテック(FinTech)」とも言えるだろう。

21世紀に入って新興国の経済発展に伴うグローバル移動が急速に拡大してきているが、ツーリズムは今後どのように変容していくのだろうか。また、リアル・サイバー両空間での第4次産業革命が進行しつつあるなかで、旅行代理店や宿泊業など既存のホスピタリティ業界の枠組みを超えたビジネスチャンスはあるのだろうか。

小川 高志 EY総合研究所 未来社会・産業研究部長、主席研究員

ロングテール化する観光需要

2015年には訪日外国人旅行者数が2000万人に迫ったが、これにはビザ発給条件緩和などが大きく奏功し、中国人旅行者数はほぼ倍増となった。観光庁「訪日外国人消費動向調査」の2015年データによれば、中国人旅行者の63.0%は初めての訪日であった。

他方、香港からの旅行者の場合、10回以上のヘビーリピーターは21.1%と初訪問18.1%を上回り、また、台湾からの旅行者も10回以上のヘビーリピーターは19.3%で初訪問20.7%とほぼ同水準にある。

これらの国・地域からの旅行者が訪問した都道府県をみると、初訪日が大半を占める中国人旅行者は東京→富士山→関西といったゴールデンルートを通るケースが多い。しかし、リピーターが多い香港や台湾からの旅行者の訪問先は、北海道、北陸、九州、沖縄などに分散しており、訪日回数が増えるにつれて、訪問先が日本各地に分散していることがうかがえる(図1)。日本は国土が南北に長く文化や風土が異なるため、観光資源が豊富で、楽しみ方も多岐にわたる。それがロングテール観光の需要を高めている。

図1 訪日旅行者訪問先都道府県分布に見るロングテール性

出典:観光庁「訪日外国人消費動向調査」2015年からEY総合研究所作成

ビッグデータや人工知能の活用で新しいツーリズムが生まれる

ビッグデータや人工知能を活用すれば、大衆ツーリズムとは異なる新しいツーリズムが開発できるようになる(IBMの人工知能Watson)

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