課題解決エンジン「Yahoo! JAPAN」の地方創生手法

企業理念に「課題解決エンジン」を掲げるYahoo! JAPAN(以下、ヤフー)。「Power to the Local」と銘打った本パネルディスカッションでは、地域に力を与えるインターネットの可能性を探るべく、ヤフーを活用した地方創生の事例を元に、地方が抱える課題解決の手法を語り合った。

ヤフーが持つノウハウで自治体の課題解決に貢献

地方から全国へ、そして世界へとつながるインターネットは、使い方次第で地方に力を与える強力なツールとなる。冒頭、同社社長室公共サービス事業本部長の石田幸央氏は、「ITこそ地方創生の切り札」として、地方創生に寄与するヤフーの主な取り組みを紹介した。ふるさと納税や税金などの決済のしくみとして「Yahoo!公金支払い」を、資金調達のしくみとして「Yahoo!基金」を提供する他、復興支援として被災地の特産品を販売するECサイト「復興デパートメント」の運営や、今年で4回目を迎える「ツール・ド・東北」の開催などを報告。「ITをビジネスで活用し、地方の皆さんに力を与えていきたい」と述べた。

ファシリテーター 石田 幸央(ヤフー株式会社 社長室 公共サービス事業本部長)

続いて、自治体から2人のゲストパネラーが登壇。長崎県平戸市企画財政課ふるさと納税推進班 黒瀬啓介氏は、平戸市のふるさと納税の取り組みを紹介した。平戸市は全国に先駆けカタログから好きな特産品を選べるポイント制度を導入し、平成26年度寄附金額日本一を達成している。今年は25億円超を見込んでおり、「ヤフーとの提携により、平戸市の特設サイトからダイレクトに決済できるようになったことも地域活性化に貢献している」と語った。

長野県白馬村役場総務課の渡邉宏太氏は、白馬村とヤフーとの協働事業を紹介した。白馬村は国際的なスキーリゾート地として知られる一方、観光以外の魅力が少ないことから、6次産業化を目的にヤフーとeコマース勉強会を実施したと報告。「白馬高校生のアイデアをもとに特産品の紫米等を使用したハンバーガーを商品化し、道の駅やスキー場で販売しており、ヤフーショッピングでの販売も検討しています」

自治体ゲストパネラー
左 渡邉宏太(長野県 白馬村役場 総務課)
右 黒瀬啓介(長崎県平戸市 企画財政課 ふるさと納税推進班)

昨年9月にはヤフーと連携協定を結び、白馬高校の魅力化事業に取り組んでいる。その一例が今年4月に新設される国際観光科の観光教育で、白馬高校の生徒が考案した宿泊プランをYahoo!トラベルで販売予定という。最後に、渡邉氏は「2014年11月の長野県北部の地震ではヤフー社員の方にボランティア活動もしていただいた。助けてもらってばかりなので、白馬村の強みを活かしてヤフーのためになることもやっていきたい」と力を込めた。

自治体ゲストパネラー
左 長谷川琢也(ヤフー株式会社 社会貢献推進部 復興支援室長)
中 佐竹正範(ヤフー株式会社 ショッピングカンパニー ご当地eコマース ストア開発マネージャー)
右 福山広樹(ヤフー株式会社 マーケティングソリューションカンパニー エリア・オンライン営業本部長)

地域の魅力を発信するIT人材の育成が不可欠

全国896の自治体が消滅の危機にあるとした、いわゆる「増田レポート」で知られる増田寛也氏は、地方創生のカギは「よそ者」「若者」「馬鹿者」にあると言う。後半では、まさに「よそ者」が地域に入り込み、ITを使って新しい風を吹き込んだ事例が紹介された。

地方自治体で実施した取り組み事例現在提供済みサービス、及び対応済みのパッケージングで提供する

宮城県石巻市に移住し、復興事業に尽力する同社社会貢献推進室復興支援室室長の長谷川琢也氏は、3.11震災後、社業を離れて個人的に参加したボランティアがきっかけで、被災地の農産物や加工食品を販売するECサイト「復興デパートメント」を立ち上げた。スタートアップは物産のPRが目的だったが、現在はITを使った新たな地方活性化モデルとなることを目指している。長谷川氏は、「ITで何かできるかもしれないと気づいた地方の人が、ITを使える『よそ者』とつながるために、私たちがITのプロフェッショナルとして輪に混ざることで、ITを活用したビジネスを波及していけたら」との思いを語った。

次いで、同社ショッピングカンパニーご当地eコマースストア開発マネージャーの佐竹 正範氏は、持続可能な地域づくりには継続的な資産循環を生み出すしくみが必要だと指摘。その上で、「顧客データを活用したマーケティングや集客から販売につなげる導線づくりなど、ヤフーだからこそできることを通じて地方にお金を循環させたい」とした。

ビジネスを生み出すには人・モノ・金が不可欠だが、とりわけ地方にはインターネットを運用してビジネスを推進できるIT人材の不足が課題となる。北海道と包括連携協定を提携するヤフーは、道内の次世代人材を育成するために、網走郡の東藻琴高校でインターネットを活用して地場産品を販売する体験型授業を3ヶ月にわたり実施した。同社マーケティングソリューションカンパニーエリア・オンライン営業本部長の福山広樹氏は、「座学だけでなく実践が身になる」といい、こう続ける。「実際に、地域ブランドを作り、サイト構築から集客、受注、発送までをワンストップで考えてもらいました。IT人材を育てること。ITを使って地域の魅力を発信すること。地方の課題解決はこの2つに集約されます」

最後に行われたパネルディスカッションで、黒瀬氏は「ふるさと納税の制度がなくなれば、特産品を全国に届けることは難しくなる。そのような将来を見据え、情報を発信できる人材の必要性を感じる」と指摘。石田氏は「ITの実務担当者が少ない現状を、人材育成や教育のしくみを作ることで解決したい」とコメントすると、登壇者一同が深く頷き、幕を降ろした。

復興デパートメントはハンドメイド品から産地直送品、伝統工芸品など、復興を目指す人たちによるさまざまなモノが集まる総合百貨店だ

お問い合わせ

  1. ヤフー株式会社
  2. URL:http://www.yahoo.co.jp
  3. Mail:local-government@mail.yahoo.co.jp
  4. TEL:0120-559-704 平日9:00~18:00(土日祝休)

この記事に関するお問い合わせは以下のフォームより送信してください。

全文をご覧いただくには有料プランへのご登録が必要です。

  • 記事本文残り0%

月刊「事業構想」購読会員登録で
全てご覧いただくことができます。
今すぐ無料トライアルに登録しよう!

初月無料トライアル!

  • 雑誌「月刊事業構想」を送料無料でお届け
  • バックナンバー含む、オリジナル記事9,000本以上が読み放題
  • フォーラム・セミナーなどイベントに優先的にご招待

※無料体験後は自動的に有料購読に移行します。無料期間内に解約しても解約金は発生しません。