鯖江市「JK課」「ゆるい移住」 地域を変える「ゆるさ」の革命

女子高生がまちづくりを担う「鯖江市役所JK課」で、総務省「ふるさとづくり大賞」の総務大臣賞を受賞。また、家賃無料で移住を体験できる「ゆるい移住」など、実験的なプロジェクトで成果をあげる。仕掛け人、若新雄純氏が語る「ゆるさ」の価値とは?

「鯖江市役所JK課」プロジェクトで、まちづくりを担う女子高生たち。市長から委嘱状が交付される

現代は、答えが存在しない時代です。黒か白か、どちらが正しかではなく、その間には無数の選択肢があり、グラデーションがある。少数派が在りやすい社会になることで、グラデーションはつくられます。そして、異質なものを許容し、社会に多様性をもたらすには、突破口となる「第3の勢力」が必要です。

まちづくりの場合、既存勢力として、市の職員や議員、地域活動に熱心な「プロい市民」がいます。一方で、まちづくりに関係なく暮らしている「ゆるい市民」として、女子高生などがいる。「ゆるい市民」にもっと注目すべきではないかという問題意識の中で、僕が鯖江市に提案し、2014年に始まったのが、女子高生がまちづくりに参加する「鯖江市役所JK課」です。

若新雄純(慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科 特任助教)

「教育」という考え方を手放す

「JK課」の提案に対し、最初、市議会や行政職員の多くは反発的でした。そうした中で、「JK課」が実現に至ったのは、まずは鯖江市・牧野百男市長のトップダウンによるところが大きいと思います。そして、市長が決断したことで、「JK課」に理解を示してくれた職員も動きやすくなりました。

多くの地域は、「市民が主役」と言いながらも、実際に主役を任せることはなかなかできていません。「JK課」の活動内容は、メンバーである女子高生が自分たちで決めます。多くの人は、未成年を集めて何かをする場合、大人が枠組みを与るべきだと思い込んでいます。でも、大人が仕掛けを用意して、複雑で多感な女子高生をやる気にさせるのは至難の業です。

それは、近年、若者にウケるテレビ番組をつくるのが難しいのと一緒。それなら、若者に自分たちで番組をつくらせればいい。与えられる側ではなく、つくる側にする。多くの若者は、自分でつくり出すという「創造の体験」を求めているのかもしれません。面白い番組ができるかどうかはわかりませんが、それで良いんです。大事なのは、大人が成果を評価しないことです。

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